
この記事をまとめると
■トラックドライバーはエアコンが付いているクルマでも扇風機を愛用する
■キャビンの内部は熱がこもりやすいため冷気を循環させる目的で使っている
■エアコンと組み合わせることで大きな効果を発揮するアイテムだ
トラックドライバーが扇風機を愛用する理由
現代において、商用車といえどもエアコン(クーラー)は当たり前の装備になった。しかし、大型トラックのキャビンや路線バスの運転席に目をやると、ダッシュボードやアシストグリップに、あと付けの小型扇風機やサーキュレーターが固定されているのをよく見かける。冷房装置が備わっているにもかかわらず、なぜプロドライバーは「車載扇風機」を頼りにするのであろうか。その理由は、トラックやバスが置かれている過酷な室内環境にあるのだという。
トラックやバスは、乗用車に比べてフロントガラスの面積が広い。ゆえに、ドライバーは太陽熱をダイレクトに浴び続ける。エアコンで室温を下げても、輻射熱による体感温度は下げにくいのだ。加えて、大型トラックのキャビン(とくにハイルーフ仕様や寝台付き)は空間が広く、冷気が均一に行き渡りにくい。また、路線バスの運転席は客席よりも一段高い位置にあることが多く、「冷気は下に溜まり、暖気は上に昇る」という物理現象により、足もとが冷えて、頭上は暑くなりやすいのだ。
また、路線バスや配送用トラックは頻繁にドアや窓を開閉する。そのたびに冷気が逃げて車内温度が急上昇するため、エアコンの利きが追いつかない場面が生じる。そこで、扇風機を使うことで体感温度の低下を図るわけだ。直射日光によるじわじわとした暑さを和らげるには、肌表面の汗を蒸発させるために、風を直接体にあてることが効果的なのである。
さらに、冷気をキャビン全体に強制循環させることで、室内の温度差を解消できる。そうすれば、エアコンの設定温度を過剰に下げずに済むため、エンジン負荷が減って、燃費向上や排出ガス削減にも貢献することになるのだ。近年は、環境負荷軽減や騒音防止のため、駐車中のアイドリングストップが厳格化されている。エンジン停止のときでも、サブバッテリーやポータブル電源で稼働するDC扇風機があれば、エアコンが停止した車内でも一定の涼しさを確保できる。
一方で、デメリットも存在する。設置場所によっては、視界が阻害される場合があることだ。たとえばダッシュボード付近に取り付ける場合、道路交通法における視界妨害(前面ガラス・側車窓ガラスへの設置制限)に抵触しないよう、配慮しなければならない。また、狭い車内で小型ファンを高速回転させることで、思いのほかモーター音や風切り音が響くことがある。これは、長時間の乗務において、疲労の原因になることもあるのだ。
現在、車載扇風機は「昭和のレトロ装備」から、「高機能な空調補助機器」に進化を遂げている。省電力で静音性の高いブラシレスモーターを搭載したモデルのほか、広角首振り機能やツインファンを備えたタイプも増えた。
トラックの電動化(BEV化)やバッテリー式クーラー(パーキングクーラー)の普及に伴い、電力を無駄に消費しないための手段として、扇風機の重要性は高まっているといってよい。以前のように単体で使うのではなく、エアコンと組み合わせることで、空間全体の快適性を生み出す機器に進化したといってよい。
