WEB CARTOP | 独自の企画と情報でクルマを斬る自動車メディア

三菱自動車の描く未来図を具現化! 新型エクリプス クロスのキーマンが開発時に込めた思いとは (1/3ページ)

三菱自動車の描く未来図を具現化! 新型エクリプス クロスのキーマンが開発時に込めた思いとは

未来に向けてのクルマづくりに込められた情熱

 2017年10月の東京モーターショーで、『Drive your Ambition』という新たなブランドメッセージを発表した三菱自動車。それは、「これまで培った技術にさらなる磨きをかけ、新しい価値を提供することで、より豊かなクルマ社会を実現する」という三菱自動車の決意表明でもある。

 その第1弾の量産モデルとして発表されたのが新型エクリプス クロス。SUVとしての基本性能の高さと、「S-AWC」がもたらす優れた走行性能、そしてスタイリッシュクーペの世界観を融合させたエクリプス クロスは、いわば三菱自動車の新たな挑戦への決意の表れとみていいだろう。

「おっしゃる通りです。三菱自動車の技術を最大限結集させて作り上げたクルマです。これを成功させなければわれわれの未来はない。それくらいの意気込みで取り組みました」

 強い口調でそう語ってくれたのは、商品事業化の総とりまとめ役を果たした山内裕司さんだ。

「三菱自動車が未来へ向けて踏み出すためのクルマであり、同時に、三菱自動車のクルマづくりの原点を見つめ直すクルマでもあったんです。ですから開発プロジェクトの最初に行ったことは三菱のヘリテイジ、原点とはなんだろうということから見つめ直しました。それはクルマづくりの精神も含めての話です」

 開発チームの強い決意は、鮮烈な赤いボディカラーにも表れている。光の当たり方で幾重にも表情を変えて見せる「レッドダイヤモンド」と名付けられたこの新色は、これまでに見たことのないような硬質感と、深みを持った独特の透明感を両立させた、非常にダイナミックに輝くボディカラーだ。

「色自体もそうですが、非常に難しい塗装技術を要するカラーなんです。ショーカーのような一品物ならまだしも、量産車でこの色を実現させるというのは、当初は生産現場からもできるわけがないという声があがったほど難しかったんです」

 一般的な赤い色の場合は、下地の上に赤を塗り、その上にクリア層を重ねることで完成となる。だがレッドダイヤモンドの場合は、赤い色に透過性を持たせて下地の色と絶妙に合わせ、さらにクリア層を重ねることで、カラーそのものが発光しているかのような深みのある輝きを出している。そのため、すべての層の厚さを1000分の1mm単位で揃える必要がある。つまり、厚みがわずかでも大きくなってしまった部分は、黒っぽくムラになってしまうのだ。

「一般的な赤色の塗装を、下の色を隠すことができる油絵具とすると、レッドダイヤモンドは透明水彩絵具です。ムラなく仕上げるためには、とてつもなく高い精度の均一さが必要となるんです。ご存じのようにクルマの工場での塗装の手順として、まず中をきれいに塗って、それから外側を塗りますよね。その重なった部分も黒く見えてしまう」

「最初に塗装した試作車は、まだら模様と言ってもいいくらいの状態だったんです。当初から実現は難しいことを承知していましたが、試作が進むにつれてハードルが想像以上に高かったことに気付かされました。開発でもっとも難航した部分のひとつがこのボディカラーです。じつはスケジュール的にも無理じゃないかということで、いったんあきらめかけたこともあったんです」

 この色を最後の最後で実現させたのは、定年を迎えて現場から退いていた木内さんという塗装技術のプロフェッショナルだった。

「あきらめかけていたある日、電話で呼ばれて工場に行ってみたら、新色が塗られたエクリプス クロスが置いてあり、その横に私が会ったことのない男性が立っていました。一品塗装で仕上げたのかと思ったら、量産ラインで塗装したという。そしてその男性が木内さんだったんです。聞けば、この色を仕上げるためだけに、岡山の工場からエクリプス クロスを開発・生産する愛知の工場に来て、1カ月以上こもって実現させてくれたんだと。会社組織のなかでは極めてイレギュラーなことです。あのときの場面は、今もありありと思い出せます。心底、感動しましたね」

 赤の特別色というと、ほかの自動車メーカーでも有名な特別色がある。いささか意地悪な質問かと思いながら、そのことを山内さんにぶつけてみた。

「赤は三菱のコーポレートカラーでもあるんです。そこで負けるわけにはいかない。新色については企画の立ち上げから構想していて、三菱の赤ここにありという気概で取り組んできました」

画像ギャラリー

WRITERS

モバイルバージョンを終了