安くて壊れにくい輸入車が続々!  日本車の優位性は失われたのか?

価格差は縮まっていても販売店の規模はまだまだ差がある

 かつて輸入車を購入できるオーナー像としては、国産オーナーよりも富裕層というイメージがあった。しかし、グローバル化の影響なのか、最近では国産車と輸入車の価格差は縮まってきている。たとえば、日本カーオブザイヤーを受賞したCセグメントモデルで比べてみよう。輸入車

 最新のスタート価格を見ると、スバル・インプレッサ(2016-2017受賞車)が1.6リッター水平対向エンジンで194万4000円~、フォルクスワーゲン・ゴルフ(2013-2014受賞車)では1.2リッターターボで253万9000円~となっている。いずれもエマージェンシーブレーキなど先進安全機能が備わっている点では共通。インプレッサはオーディオレス、ゴルフはインフォテイメントシステムが標準装備される一方で、ゴルフはACC(追従クルーズコントロール)がオプションになるなど仕様は異なるので単純比較はできないのだが、50~60万円程度の差だ。

 もう一例として、プレステージサルーンのメルセデスベンツSクラスとレクサスLS500hのスタート価格を比べてみると、前者が1140万円、後者が980万円。こちらも同じくらいの価格差。

 逆に、リッターカー・カテゴリーで国産車と輸入車を、同じくスタート価格で比べてみよう。ピックアップしたのはルノー・トゥインゴとトヨタ・パッソ。トゥインゴが177万円、パッソが115万200円。ここでも価格差の絶対値は大筋で変わらないが、比率でいうとかなりの価格差になる。おおまかな方向性としては、高価格帯になるほど相対的に輸入車と国産車の価格差は小さく感じられる傾向にあるというのが現状だ。

 とはいえ、200万円以下でフレンチハッチが買えるということは、軽自動車と価格帯としてはバッティングしてくるわけで、これまた輸入車にも手が届きやすくなったと感じている人も少なくないだろう。しかもいまどきの輸入車はかつての印象よりは壊れにくくなっている。

 とはいえ、国産車的なメンテナンスフリー感覚で乗れるのは新車から最初の車検までの3年間で、それ以降は徐々にメンテナンス費用に差がついてくる(輸入車はコストが上がる)傾向にあるというのも、またユーザーレベルでは実感しているところだろう。

 また、故障はせずとも3年も経てば乗り味に劣化を感じるのは輸入車、とくに欧州車に見られる傾向だ。このあたり、消耗品をきちんと交換していけばいいのだが、国産車の感覚でいうとランニングコストが高くなったと感じてしまうかもしれない。まして軽自動車と同じようなイメージで、欧州コンパクトに手を出すのは維持費の面で差が大きく感じるだろう。

 それでも輸入車のセールスは確実に伸びている。2017年度の新車販売台数は31万台弱で、シェアでいうと9.1%となる。価格帯の面では国産車との差が小さくなってきた輸入車を選ぶユーザーは増えてきている。では、輸入車に対抗する国産車の優位性は何があるのだろうか。

 前述したように輸入車が壊れづらくなってきたとはいえ、10年レベルで考えるとメンテナンスコストの面では国産車に軍配が上がる。そして、車齢を重ねてもメンテナンス費がそれほどかからないという国産車のアドバンテージは中古車価格にも反映されている。つまり、壊れづらいというメリットは、リセールバリューに直結してくる。

 もうひとつ重要な違いとして販売店の数が挙げられる。都市部においては輸入車ディーラーを見かけることも多く、さほど違いはないと感じてしまうが、日本全国で見ると歴然とした差がある。大衆車的なブランドのフォルクスワーゲンにしても東京都では30店舗以上(中古車センター含む)を展開しているが、島根県には正規ディーラーはなく、県内に1拠点という県も複数ある。クルマ自体には魅力があっても、「買ったあとのことを考えると買いづらい」とユーザーが感じる地域もまだまだあるのだ。

 販売店の数とシェアについては、シェアの拡大に従って充実することも期待できるが、リセールバリューについては一朝一夕には改善が難しいだろう。逆に、この要素において輸入車全般に改善が見られれば、国産車のアドバンテージは失われるかもしれない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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