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トヨタのクルマ作りはいまでも「80点主義」に縛られているのか?

トヨタのクルマ作りはいまでも「80点主義」に縛られているのか?

平均点主義ではなく徹底的に欠点を潰すのが「80点主義」の真意

 トヨタのクルマづくりにおける姿勢は「80点主義」といわれることがある。これを「平均点主義のものづくり」として批判されることも少なくないが、そもそもトヨタの80点主義の精神は「お客様にとって、一カ所でも劣っている(と感じる)点があってはならない」という考え方に基づいている。購入の決め手や、そのクルマの魅力となるストロングポイントも80点で構わないという意味ではない。ストロングポイント以外も80点以上に仕上げておこう、というのが本意だ。いわゆる5点満点のレーダーチャート(クモの巣グラフ)でいうと、すべての項目で4点以上の大きな多角形を目指すのが「80点主義」だ。

 ストロングポイントは100点だが、大きな欠点もあるクルマを個性的ということもあるが、そうしたクルマでは、欠点についてはユーザーが我慢することを前提としている。最初のうちは「アバタもえくぼ」で我慢できていても、長く使っているうちにストレスになってしまうこともあるだろう。また、その欠点が安全性に影響を及ぼすような項目であったら、大きなトラブルにつながる可能性もある。すべての項目で合格点を目指すという80点主義は、けっして手抜きという意味ではなく、むしろ完璧主義に近い印象さえ受ける。

 では、なぜ100点主義ではないのかといえば、この80点主義が最初に提唱されたのが、カローラの開発時だったからだろう。超高級車であれば全項目で100点を目指すことができても、普及価格帯であることも重要な項目であるカローラにおいて、それは現実的ではない。むしろ、徹底的に欠点を潰すことにこだわったことが「80点主義」という言葉につながった。

 そして「80点主義」はトヨタの全体的なクルマづくりにおける特徴となっていった。欠点を潰そうとする姿勢が、どこかつまらないクルマづくりと思われるようになり、結果として「80点主義」は、もともとの高い目標から、平均的なクルマづくりで良しとしている姿勢と誤解されるようになっていった面もあるだろう。

 しかし、ここ数年におけるトヨタのクルマづくりは80点主義から脱却したようにも見える。たとえば、2019年に登場する注目のスポーツカー「スープラ」だが、少なくともプロトタイプにおいてウインカーレバーが左側にあった。輸入車であれば珍しくないレイアウトだが、トヨタ車としてウインカーレバーが左であることを許容するのは、80点主義であれば考えづらい。ご存じのように新型スープラはBMWが製造するモデルだ。

 欧州車ではISO規格に則り、ハンドル位置にかかわらずウインカーレバーは左側で、もしスープラのためにウインカーレバーを右にしようと思ったら、専用のコラム回りを設計する必要があり、多大な投資を必要としてしまう。最近、トヨタのエンジニアと話をすると「リソーセス」という言葉を耳にすることが多いような気もする。80点主義を否定するわけではないが、リソーセスの最適化によってストロングポイントを強化することが、激変する自動車業界を生き抜くために重要となっている。

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