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ドラテクだけじゃ一流になれない! いまどきのレーシングドライバーに課せられた「凄まじい」仕事量 (1/2ページ)

ドラテクだけじゃ一流になれない! いまどきのレーシングドライバーに課せられた「凄まじい」仕事量

速く走らせるためには細かな情報共有が大事

 モータースポーツシーンにおいて、レーシングマシンをセットアップしていくのは非常に重要だ。かつて所属した超一流レーシングチームの監督からは「レーサーはアンダーかオーバーかだけを報告したらええんや」と指示された。それでマシンをどうセットアップするのかはエンジニアの仕事だという。

 しかし、実際にはそれだけで効率的にマシンを仕上げていくことはできなかった。限られた走行時間、厳しい競争環境の近代レーシングシーンにあっては「アンダーかオーバーか」だけで結論を出せるほど事は単純ではなくなっている。

 アンダーとはコーナリング特性がアンダーステアであることを意味し、オーバーはオーバーステアであることを示しているのだが、1周4〜6kmほどのサーキットのラップタイムでライバルとの差がコンマ数秒しか違わないような状況では、レーシングドライバーがより正確で細かなフィードバックを発する事で無駄な確認作業を省くことができる。

 2021年シーズンのF1グランプリ。日本人ドライバーで若干21歳の角田裕毅選手がアルファタウリ・ホンダF1チームからデビューし世界的に注目を浴びている。デビュー戦となった第1戦・バーレーンのサクヒールGPでは予選から好調で、Q1ではレッドブル・ホンダのM・フェルスタッペン選手にコンマ1秒差の2位につけ世界を震撼させた。

 決勝でも歴代のF1チャンピオン達を何度もオーバーテイクし結果9位に入賞。大きく賞賛されたのは記憶に新しい。しかし、続く2〜4戦ではアクシデントやトラブルに見舞われ、速さも示せなくなってしまった。そんな彼のコメントに着目していたら、「チームメイトのP・ガスリーとまったく逆のフィードバックになっていて同じクルマと思えない」という趣旨の言葉が発せられていた。これは角田選手は「オーバー」とフィードバックしているのにガスリー選手は「アンダー」だと表現しているようなものと考えられる。

 たとえばイモラのタンブレロシケインで角田選手は「オーバーステアが強くて攻められない」というのに対しガスリー選手は「アンダーステアで速く走れない」と言っているとしたら、どんな状況や違いが考えられるだろうか。

 コーナーは大きく区分するとアプローチ区間、コーナリング区間、立ち上がり区間の3つに分けることができる。さらに、そこでの車速やブレーキング、アクセラレーション、ステアリング操舵角など操作や走行姿勢の状態も異なる。エンジニアはそれらを総合的に紐解いて判断しセットアップに反映していく必要があるのだ。

 角田選手が「オーバーステア」を感じるのはターンインかコーナリング中か、立ち上がり加速場面か。その状況によって加えるべきセットアップの内容は異なってくる。同じセッティングのガスリー選手はアンダーステアだというなら、それも同じように細かな状況を掘り下げて理解していく必要がある。

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