
この記事をまとめると
■かつてはド派手なパーツや箱絵などによる装飾がデコトラの魅力だった
■昨今のデコトラオーナーは派手さよりも美しさを求める傾向にある
■いまデコトラオーナーに好まれるカスタム手法を解説
派手さよりも美しさを求める傾向に
かねてより派手なトラックだと認識されている日本独自の文化、デコトラ。龍や虎などの絵を描き、ド派手な装飾を施したトラックこそが、デコトラだと受け止めている人は多いに違いない。デコトラとは1970年代から現在へと続いてきた改造車であるのだが、デコトラブームの火付け役となった映画『トラック野郎』シリーズでお馴染みの一番星号のようなトラックが、デコトラの基本スタイルとなっている。
近年では、そんなトラックを見ることがめっぽう少なくなった。そのため、デコトラが減ったと思われてしまいがちなのだが、じつのところはそうではない。時代の流れやベース車のデザインなどにより、デコトラの飾り方そのものが大きく変化しているのである。わかりやすくいうなれば、派手さから美しさを求めるようになったのだ。
まずは、荷物を積むためのボディそのものにこだわる人が増えた。強度や見た目の良さなどを重視し、オリジナルのボディを製作するのである。それは「造りボディ」とデコトラ業界では呼ばれているのだが、大型の冷凍車やウイング車であれば1000万円以上の資金をかけて造りボディを製作するというケースは珍しくない。それだけで、ド派手なデコトラほどの費用を注ぎ込んでいるのである。さらには燃料タンクなどの補器類、そしてフレームなどにこだわる人も存在する。
運転席が存在するキャビンまわりでは、大きな飾りを取り付けるという風潮も少なくなった。とくにヘッドライトがフロントバンパーに装備されるようになった大型や中型のトラックたちは、顕著にその傾向が現れており、不必要な部分をスムージングして埋めたりメッキをかけたりと、トラックに詳しくない人であれば気づかないような部分にこだわる人が増えたのである。
そのような時代になったからこそ、知識がない人たちから見ればデコトラが少なくなったと感じてしまうのだ。
派手さから美しさを求めるようになったデコトラの世界だが、それはとてもいい傾向であるようにも思える。どのような荷物を扱う業者でも、綺麗なトラックで大切な荷物を運んでもらえるのなら、きっと本望だろう。派手なトラックであればコンプラが気になるかもしれないが、こんな綺麗なトラックで荷物を積みにくるなとは、誰もいわないだろう。
そしてなにより、トラックを綺麗にしているドライバーへの評価も自ずと高くなる。トラックを大切にしているこのドライバーなら、きっと荷物を大切に扱ってくれるという感情が芽生えるからだ。そのように、デコトラ界は時代の流れに合わせた進化を続けてきたのである。
もちろん、現在でもド派手なデコトラは全国各地に存在している。しかし、その大半は仕事車ではなく、趣味のためのプライベートカー。そのため、日常生活のなかでド派手なデコトラと遭遇することは難しいがデコトラの数そのものは明らかに増え続けているという事実は、ぜひとも覚えておいてほしい。