
この記事をまとめると
■長野県塩尻市が特定自動運行(自動運転レベル4)の許可を取得した
■塩尻市は「まちなかの便利な生活」と「農山村地域のゆとりのある生活」の両立を目指す
■2020年度より自動運転及びAI活用型オンデマンドバスの実証実験を実施してきた
長野県塩尻市が特定自動運行の許可を取得!
2025年1月、長野県塩尻市が道路交通法に基づく特定自動運行の許可を取得した。同市では2020年度から、自動運転移動サービスの実現に向けた実証実験を実施してきた。地理的に長野県のほぼ中央に位置する同市は、国道19号線や20号線に加えて長野自動車道が通るほか、JR中央本線、篠ノ井線が通る交通の要衝だ。人口は、2000年ごろからほぼ横ばいの状況であるものの、年齢分布は顕著な高齢化傾向を示しており、ドーナツ化現象で中心地の空洞化が進んでいるという。
こういった状況を鑑み、市街地だけではなく農村地域の暮らしも維持することで「まちなかの便利な生活」と「農山村地域のゆとりのある生活」を両立する「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」の都市構造の構築を目指しているのだ。そのためには、将来にわたって安定した地域交通を、構築、維持する必要がある。同時に、昨今問題となっている高齢者の交通事故防止といった観点からも、公共交通機関の利用促進を図らなければならない。
しかし、必ずしも利用者が多いとはいえない地方公共交通は、経営が難しいことに加えて2024年問題による担い手不足が深刻化している。これらを解決するために、同市では2020年度から自動運転及び、AI活用型オンデマンドバスを含むMaaS実証実験を開始した。
オンデマンドバスとは、路線バスのような決まった経路や時刻表がなく、利用者が予約をすることで運行されるバスを指す。また、国土交通省が推進するMaaS(マース、Mobility as a Service)とは「地域住民や旅行者ひとりひとりのトリップ単位(人がある目的を持ってある地点からある地点へ移動する単位)における移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせ、検索、予約、決済などを一括で行うサービス」のことである。
同市ではこれらの実証実験を重ねてきたことにより、今回の自動運転レベル4認可取得につながった。2024年度中に市内市街地の生活道路において、自動運転レベル4を含む自動運転サービスの社会実装を実施。具体的には、すでに所有するティアフォー製の車両「Minibus」を使用して、塩尻駅と塩尻市役所間に運行経路を設定し、他車などが混在する一般公道を走行するのだ。
自動運転はその段階に応じて、レベル1から5段階に分類されており、レベル1~2はドライバーが運行監視を行うが、3以上はシステムによる監視となる。レベル4は、「特定条件下においてシステムがすべての運転タスクを実施」するもので、限定された地域における無人自動運転移動サービスなのである。
レベル5は高速道路などで実施が想定されている完全自動運転で、2025年をめどに実現が予定されている。SFでしか見ることのない遠い未来の技術のように思われていたが、実際は実現まであと1歩のところにまで来ているようだ。他の自治体でも地域生活のサポートだけではなく、観光を目的とした実証実験も複数カ所で行われている。愛知万博では、キッコロやモリゾーのぬいぐるみが置かれた無人バスに驚いた人も多かったが、あれから10年が経ってそれが日常になろうとしているのである。