
この記事をまとめると
■不評のスタイルを劇的に変更したマイナーチェンジ事例を振り返る
■三菱やフィアットなど大幅なデザイン修正が話題を呼んだ車種もある
■販売回復に成功した例もありデザインの重要性を再認識させられる
スタイリングでクルマの評価は大きく変わる
一般的にクルマのマイナーチェンジとは、商品価値の継続を目的に行われる小改良のことを指します。とりわけ、スタイリングの改良は目に見える変化として少なくない効果が期待されますが、なかにはクルマのイメージ自体を変えてしまうほどの改変も見られます。今回は、そんな劇的な変化を示すマイナーチェンジを遂げた5つのモデルを振り返ってみたいと思います。
●新ジャンル立ち上げで力み過ぎたデザイン
最初に取り上げるのは、スタイリングの不評を理由に大幅な「修正」に踏み切った2台です。1台目は、1999年登場の三菱ミラージュ・ディンゴ。
当時、「いいもの ながく」をブランドスローガンとしていた三菱は、新たにSUW(スマート・ユーティリティ・ワゴン)を提唱します。その第1弾として「イノベクティブ・コンパクト」をコンセプトとした同車は、なんと初代ミラージュの六角断面をボディ全体で再現。その断面に沿う縦型の前後ライトや唐突なブリスター風フェンダーによるスタイルはかなり異様な格好に……。
あまりの不評ぶりに、同車は2年後の2001年にマイナーチェンジを実施しましたが、新しいヘッドライトやグリルによる「顔」は逆に無難の極みへ。もちろん、六角断面のイメージもすっかり消えてしまったのです。
●世界中の注目を集めた超個性スタイル
修正版の2台目は、ご存じフィアットのムルティプラ。1950年代のワゴンをルーツとし、1998年に登場したコンパクトMPV(マルチパーパスヴィークル)です。
3人がけ2列シートのパッケージもユニークですが、まるで鏡餅のような上下2段の基本構造もじつに不思議な佇まい。さらに、その上段のAピラー根本に付けられたハイビーム用ヘッドライトなど、6個の小さなライトが散りばめられた「顔」はいかなる想定をも上まわる異様さです。
「世界一醜いクルマ」という酷評を受けて行われた2004年のマイナーチェンジは、独特な2段構造を解消する大手術に。ただ、一見平凡になった顔は意外に上品で、ここは大手術を手がけたカロッツェリア・イデアの力量だったのかもしれません。
●光り輝く顔はヒット車の証?
さて、次に取り上げるのは、メーカーが掲げる新しい「顔」に急変させたパターン。その1台目は、2007年発売の三菱デリカD:5です。
シンプルなボディは、2005年の東京モーターショーに出品されたConcept-D:5をベースにしたもの。思い返せば、このときは10代目ランエボを想起させるConcept-Xやi(アイ)など、三菱がクルマづくりの原点に立ち返るとして秀作が揃ったころでした。実際、市販版のD:5も端正な顔付きがじつに好印象。
ところが、2019年に行われたマイナーチェンジでは、当時の三菱が打ち上げたばかりの「ダイナミックシールド」をいち早く移植。縦型のLEDヘッドライトやメッキパーツによる顔は、まるで日光東照宮的な絢爛さに激変しました。たしかにインパクトは絶大でしたが、オリジナルの端正さは貴重でした。