
この記事をまとめると
■F1では2026年の新パワーユニット規則が各社参戦の引き金に
■電動化・持続可能燃料で大手メーカーの開発意義が高まる
■アウディとフォードは復帰しホンダも再参戦する一方でルノーは撤退へ
新たな参戦の背景にある電動化の波
来シーズン、2026年のF1にはアウディとフォードがパワーユニットのサプライヤーとして新たに参戦してくる。両社はなぜ、このタイミングでF1にパワーユニットを供給することを決断したのか。
それは2026年から採用される新しいパワーユニットのレギュレーションが大きく影響している。現行のパワーユニットは、2022年から続いている1.6リッターV6直噴シングルターボエンジンにMGU-H(熱エネルギー回生システム)とMGU-K(モーター)を備えたターボハイブリッドタイプ。
これが2026年になると、ベースになるエンジンそのものこそ1.6リッターV6直噴シングルターボエンジンで変わりがないが、複雑なMGU-Hが廃止され、電気出力が150kWから350kWへと大幅に増加する。
この変更で、最高出力の発生源が内燃エンジン50%、モーター50%と同等になるのが大きな違い。これまでは内燃エンジンが8割以上、モーターが1割ちょっとだったのでこの差は大きく、イチから新しいパワーユニットを設計する必要がある。また、2026年からは燃料もこれまでのエタノール・バイオ燃料が10%の「E10フューエル」に変わり、100%サステナブル燃料を使用することを義務づけられる。
この電動化率の向上と環境に配慮した新技術の導入、そして持続可能な技術の推進が大義名分となり、F1という世界最高レベルの技術競争のなかで電動化技術の開発を行えることが、大手自動車メーカーにとって魅力的に映ったのは間違いない。
事実、ザウバーを買収したアウディはその参戦理由について、環境に配慮した技術開発への取り組みを強調しているし、レッドブルとパートナーを組んだフォードも「持続可能性が高く、電動化技術の開発を進め、その知見を養う機会のある新レギュレーションがなければ、F1に復帰することはなかっただろう」と述べている。
もちろん、レギュレーションが大きく変わることで先行メーカーに対する新規参入メーカーのビハインドが小さくなる点も、見逃せない要素であったのは間違いない。
そして2021年をもってF1から撤退しているホンダも、カーボンニュートラル実現に向けた技術開発と将来の電動化車両開発に意義があるとして、2026年からアストンマーティンにパワーユニットを供給して正式にF1に復帰することを表明している。
一方で、ルノーは2025年限りでパワーユニットの製造を終了することを決定、発表している。ルノーは通算勝利数177勝の名門だが、近年は成績不振が続き、そこに経営不振も影響。なによりF1活動にかかるコストが大きすぎるのが原因のようだ(PUの開発コストは1億2000万ドル=約173億円だが、カスタマーPUだと1700万ドル=約24億円で収まる)。
なお、F1チームとしては「アルピーヌ」ブランドで続行し、2026年以降はメルセデス製のパワーユニットをカスタマー供給してもらう方針だ。