
この記事をまとめると
■逆走事故の多くが平面交差のICやJCTで発生しているといわれる
■色わけ舗装で混乱を防ごうと図るが運転者の心理と矛盾し逆効果になる場合も
■根本的な標識設計や案内方法の見直しが必要とされる
逆走対策を施行するもいまだ危険な「平面Y字」
道路を逆走する事例があとを絶たない。発生場所の統計によると、インターチェンジやジャンクションでの割合が半数以上にのぼっている。なかでも注目されるのが、平面Y字型交差とよばれる道路のつくりだ。
進入路と出口路が同じ平面で交差する作りとなっており、本来であれば出入りの進路は立体交差とするべきところ、地形的な条件や周辺道路の交通量、整備のための費用といった理由から、平面で交差する出入り口にしたというケースが多い。
それでも近年の逆走の事例を踏まえ、走路を間違わないようにする方策は練られていて、現場で実施されている。たとえば、出口側には逆走して入りにくい印象を与えるラバーポールを並べたり、出口と入口の通路の色を変えて区別するなどの対策が施行されている。当然、路面には進行方向を示す矢印が路面に描かれるほか、進入路側には一時停止を促す停止線や標識が設けられ、進路を確認することを促す施策も行われている。
路面の色を変える場合、出口側通路を青、入口側通路を赤とする事例が多いようだ。しかし進入する側の運転者の心理として、赤は入ってはいけないという判断をしかねないだろうかとの疑問がある。信号を例にしても、青は「進め」で安心感があるが、赤は「停止」で緊張感をともなう。その赤い塗装が施された路面の方向へ進路を取ることは、慌てた心理状態の運転者に「そちらへ行ったら危険」という警告を与えているかもしれない。
もちろん出口側の通路も現在の青ではなく赤になれば、その通路へ出てはいけないとの心理が働くかもしれない。したがって、入口出口に問わず、赤の舗装を使う際には慎重でなければならない。不安、緊張感、焦りを抱いた状態でも、判断を誤らずに済む色使いや障害物の設置をしなければならないだろう。
ことに、SA・PAなど当初は想定していなかった箇所にスマートICなど新たな出入口を設ける場合は平面で交差しやすくなってしまうだろう。また、間違えては大変だとの心理をもたらす日本の道路環境も問題だ。そのひとつに、それなりに高額な有料道路も挙げられるのではないか。
たとえば米国のフリーウェイは基本的に無料なので、もし出口や進路を間違えたとしても、次の出口で乗り換えて戻ればいいという気安さがある。
またフリーウェイを利用する際には、自分が東西南北のどの方向へ向かおうとしているのか、それさえ知っていれば選ぶべき道筋は東西南北の標識ですぐにわかる。地名などを読まなくてもいいのだ。
たとえば東名高速道路で、静岡から東京へ向かう場合は「東」、関西へ向かうなら「西」と書かれた標識を頼りに行けば間違いなく目的地を目指せる。逆走も起こりにくいのではないか。しかし、たとえば静岡から東京へ向かうのに横浜と書かれていても、それが東京へ向かう方角なのかわからない人もいるかもしれない。そして本線に入ってから間違いと気づけば、慌てたり焦ったりしてしまいがちだ。
そうした基本的な道標が十分に練られていないのが、日本の交通環境である。単に平面交差が悪いというだけでなく、根本的課題がまだ解決されていないことに問題があるのではないだろうか。