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なんじゃこの奇怪な「三ツ目ライト」のクルマは! チェコの「タトラ」がかつて作っていた「T603」が見た目に反してスゴイヤツだった (1/2ページ)

なんじゃこの奇怪な「三ツ目ライト」のクルマは! チェコの「タトラ」がかつて作っていた「T603」が見た目に反してスゴイヤツだった

この記事をまとめると

■チェコ共和国のトラックメーカーである「タトラ」はかつては乗用車も生産していた

■タトラの乗用車は空力を意識した流線形ボディや先鋭的な技術には定評があった

■なかでもタトラT603は3つ目の独特な姿でなかなかのレーシングヒストリーを残している

独特すぎるスタイリングのタトラT603

 旧共産圏、いわゆる東側のクルマというのは馴染みが薄いせいか個性や新鮮味を感じるものが少なくありません。現在ではチェコ共和国と呼ばれる国で作られたタトラT603もまた、空冷V8エンジンをリヤに積み、3つ目ライトをもった不思議な雰囲気のフルサイズセダン。ですが、ルックスとは裏腹に、輝けるレーシングヒストリーをもっていたり、また激動する歴史に翻弄されたりと、T603はなかなか興味深いクルマです。

 かなりのクルマ好きでもタトラの名を聞いてすんなりチェコスロバキア、あるいはモラヴィアといった地域を思い起こす方は滅多にいないはず。ここらへんは歴史の教科書にも詳細は記されていないので、興味のある方はお調べいただきたいのですが、ざっくりいうと民族間の離合集散があってじつに複雑な背景があるということ。そんなエリアで1897年タトラは自動車メーカーとして創立されています。

 戦前から第二次大戦くらいまで、タトラの歴史はじつに興味深い。たとえば、チェコの高官はソ連製のセダンに乗ることが決められていたにもかかわらず、その品質があまりに低いことや納期の遅れから秘密裏に独自開発を進めたり、今回ご紹介するT603のご先祖にあたるV570がヒトラーとフェルディナンド・ポルシェ博士の目に留まり、フォルクスワーゲンのヒントになったなどなど、数えきれないほどのエピソードがあるのです。が、いちいち紹介しているとT603のスペースが足りませんので割愛です。

 さて、前述の通りソ連のクルマに代わる高官向けセダンをひっそりと開発していたタトラですが、1954年には正式に政府の許可がおりてT603と名付けられました。それまでのタトラが得意としていた空力を意識した流線形ボディが早々にデザインされ、この際にフロントのセンターに3つ目が配されることに。ガラス(あるいは透明なアクリル?)で覆われた楕円形のライトケースを設け、ライトが3つ並列する独特のデザイン。

 中央の1灯はステアリングと連動して進行方向を照らすという先進的な機構ですが、これは1936年に同社が作ったT87というセダンから引き継いだアイディア。これだけでも、タトラがいかに先進的メーカーだったのか、よくわかるエピソードです。

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