
この記事をまとめると
■過給器が空気を圧縮したときの空気の圧力のことをブースト圧という
■ブーストアップはブースト圧をノーマルより高めて出力を向上させるチューニング
■ブーストアップはノウハウのあるショップでないとエンジンブローにもつながりかねない
出力アップの方法で効果が大きいのは「吸入空気量の増大」
「ブースト圧1.2キロで30馬力アップ!」とか「ブーストアップ」「ブースト計」と、ターボエンジンを語るうえで欠かせないフレーズになっている「ブースト圧」。そもそも、このブースト圧とは、何なのか?
ブースト圧とは、ターボチャージャーやスーパーチャージャーのコンプレッサーが、空気を圧縮したときの空気の圧力=「過給圧」のことを指す。語源は英語の「boost」で、直訳すると「押し上げる」「促進する」「強化する」「高める」「援護する」といった意味になる。
エンジンの出力を上げる方法はいくつかあるが、性能向上の三大要素は「吸入空気量の増大」「燃焼効率の向上」「フリクションロスの低減」といわれている。
このうちとくに効果が大きいのは「吸入空気量の増大」。具体的には、排気量アップか、高回転化か、過給機を使って無理やり空気をシリンダー内に押し込み、体積効率を上げるのが王道。
NAエンジンの場合、ピストンの下降で生じるシリンダー内の負圧で空気を吸い込むしかないので、排気量が1997㏄(2リッター)のエンジンなら、基本的に吸入空気は1997㏄しか入らない(実際はエアクリーナーやその他の抵抗で、排気量の100%以下しか吸入できないのが普通)。しかし、エンジンパワーは、吸入空気量に比例するし、とくにトルクは排気量1000㏄あたりおよそ10㎏-mが相場だと思えばいい。というわけで、ターボなどの過給機で、大気圧の2倍の空気を送り込んでやれば、2リッターのエンジンでも、NA4リッター級のパワー&トルクが得られるというのが、ターボチューンの仕組み。
ちなみに大気中の空気には、およそ1気圧(標準大気圧=海面上で 1013.25hPa、水銀柱圧で760mmHg)の圧力がかかっているので、ブースト圧もこの標準大気圧がひとつの基準。ブースト圧の単位は、国際単位「kPa」(タイヤの空気圧も同じ単位)が現在の標準だ。少し前まで、「ブースト1.2キロ」などといっていたのは、単位が「kgf/cm2」だったときの名残り。「kgf/cm2」は、1平方cmの面積に何kgの力が加わっているかを示す数字だが、「1kgf/cm2=98.07kPa」なので、単位が「kPa」でも「kgf/cm2」でも、数字の意味合いはほとんど誤差の範囲でしかない。
日本では、「ブースト圧1.0kPa」といったとき、標準大気圧を0kPaとして、過給機によって加圧されたぶんだけカウントしているので(専門的にはゲージ圧もしくは相対圧)、この「ブースト圧1.0kPa」は、大気圧のおよそ2倍の吸入空気量の状態を意味している。
ブーストアップというチューニングは、ブーストコントローラーなどを使って、このブースト圧をノーマルより高めて出力を向上させる手法だが、ブースト圧が上がれば、それに伴いエンジン強度が不足してきたり、異常燃焼(ノッキング)の問題も生じるので、無制限にブーストアップすることはできない。
空燃比や点火時期の最適化と合わせ、ノウハウのあるチューニングショップに依頼しないと、エンジンブローにもつながりかねないので、信頼できるチューナーを探すことからはじめよう。