
この記事をまとめると
■新型ホンダ・プレリュードのインテリアデザイナーに内装作りのこだわりをインタビュー
■ベース車に対して視界よく使いやすい基本を押さえつつ特有のデザインに作り込んでいる
■スポーティさとモチーフの「グライダー」感を両立した上質なインテリアとなっている
新型プレリュードならではの世界観をインテリア造形に表現
2025年9月の国内正式発表・発売を間近に控えた、6代目となる新型ホンダ・プレリュード。
インテリアデザインを担当した本田技術研究所の東森裕生さんに、新しいハイブリッド・スペシャリティカーの内装作りに込めたこだわりのポイント聞いた。
──インテリアデザインは、エクステリア以上に制約が厳しいと想像しています。新型プレリュードはシビックとある程度共有しながら作る必要があったと思いますが、どの程度専用でデザインできましたか?
東森さん:もちろん制約はありますが、お客様にそれがバレてしまってはいけません。新型プレリュードのために専用でデザインしています。ベース車両があったとしても、その特徴を上手く消し込みながら、このクルマならではのデザインに昇華させることを意識しています。
ディスプレイや空調関係、シフトなどの並びがどれも同じと思われるかもしれませんが、それは我々のデザインアイデンティティであり、ドライバーにとっても使いやすく視界もよいという基本を押さえているので、そこは変えるべきではないと考えました。
──フロントフェンダーとインパネとドアトリム上部のラインを連続させるというデザインは、どのような経緯でできあがったのでしょうか?
東森さん:もともと我々の社内で「動感視界」という概念があり、ホンダとしては視界のよさをベーシックな価値として提供していきたいと考えています。それをもっと良くしていくには、フェンダーから一貫して連続した流れを作るのがいい、ということですね。これはエクステリアとインテリアを別々に作ってしまったらダメになります。
そしてこのラインは、車線に沿っているんですね。ドアトリムの上側に好きな角度を付けると、上のほうへそのラインが消失してしまいます。フェンダーを盛り上げすぎても、車線がフェンダーに突き刺さりません。
フェンダーとドアトリムの上側がしっかり一直線になりながら、センターラインに向かって消失点に消えていく、これを内外装ともに連携しながら作っていくのが大事なんです。内装と外装それぞれではなく、クルマ1台で考えるのが大切ですね。
──ドアトリム下側中央が、乗降性向上のためにえぐれているのも珍しいですよね。
東森さん:デザイナーとしては入れたくありませんが、クーペはドアが長いので、横に駐車されると開けにくいですよね。そこで無理して乗り降りしようとするとつま先が当たって傷つくので、どうすれば解消できるかを考え、スタイリングを壊さずに足を通しやすい形状にしよう、かつポケットも犠牲にしないと考えてこの形になりました。
こうしてひと手間かけることで、助手席の人に「乗り降りしやすい」と感じてもらえる。こうしたちょっとしたことがすごく大事で、サイドステップ中央のシボを滑りにくくしたのも、新型プレリュードをより洗練させるためにこだわったところです。
──インパネのメーターフードを、実際には一体成形であるにもかかわらず、あえて別体に見せたのはなぜでしょうか? しっかり一体に見せたほうが、視覚的ノイズが減ると思ったのですが……。
東森さん:何もない一体型のインパネアッパーですと、だらんとした形が連続しますが、ちょっと浮いているような軽快さを出すことで、それがドライバー専用の装備だということを印象づけることができます。ここだけはスポーツカーらしさを出したいと考えました。