
この記事をまとめると
■新型車が型式指定を受けるときには衝突安全性能試験が行われる
■かつては試作車を製作して実際に衝突実験を行っていたため非常にコストがかかった
■現在はコンピュータで正確なシミュレーションを行ってコストダウンが図られている
実際にクルマをブツけて分析・解析する衝突安全性能試験
クルマの安全性を確保するため、新型車が型式指定を受けるときには、国土交通省が定めた基準に基づいて衝突安全性能試験を実施する。前面衝突試験、側面衝突試験など複数の試験を行う。この衝突安全性能試験をクリアするには、新型車の開発段階でも、同様の試験を実施しなければならない。以前は何台もの試作車を使って衝突安全性能試験を行うため、大幅なコストアップを招いていた。
新車の価格は、安価な車種なら150万円を下まわるが、これは大量生産を行うからこそ可能になるものだ。開発段階で試作車を製造するには、膨大なコストが費やされるため、衝突安全性能試験を複数回行うと膨大な金額になってしまう。新車価格が200万円前後の車種でも、試作車となれば、1台当たり数千万円から億単位に達する。
衝突した後の車両は、詳細な分析を行い、秘匿性が高いために厳重に処理される。衝突安全性能試験は、開発現場における負担が大きかった。
そこでいまは、コンピュータを使って、衝突安全性能試験のシミュレーションを正確に行えるようになっている。メーカーの開発者は次のように語った。「いまは衝突したときの状態を(コンピュータを使った)シミュレーションで正確に知ることができる。(以前は開発のために何回も衝突させていたが、)いまは最後に確認するために試験する程度だ。開発過程で潰す台数は大幅に減った」。
この話をメーカーの開発者から聞いたのは、いまから20年くらい前だ。今日では試験の精度がさらに向上しているだろう。
最近は認証を受ける際の衝突安全性能試験において、複数のメーカーで不正があったことが問題になっている。法規に適した正しい試験を行わねばならないのは当然だが、シミュレーションによって得られるデータも多い。衝突安全性能試験も、自動車工業会などの業界団体が中心になって、車両開発の現状に沿った方法に進化させる必要があるだろう。