
この記事をまとめると
■メーカーの事業努力によって日本でのアメ車の販売には大きな差が出ている
■トヨタ・キャバリエとして販売されたシボレー・キャバリエであったが日本ではまったく売れなかった
■アメリカでは日本車キラーとして人気だったクライスラー・ネオンも日本では不発
日本ではなかなかヒットに恵まれないアメリカンブランド
「アメリカには日本車がたくさん走っているのに、日本ではアメ車をほとんど見かけない」
日米通商交渉のなかで、米トランプ大統領が吠えた。その理由として、日本にはアメ車の輸入を妨げる法律があるという見解まで示したときがあった。いわゆる非関税障壁というものだ。
これに対して石破首相は、国会で非関税障壁はなく一部のアメ車が日本でしっかり売れているとして、メーカー(または輸入事業者)の事業努力によって日本でのアメ車の販売に差が出ているのだと答弁した。
確かにそのとおりである。売れているアメ車の代表格が、ステランティスの「ジープ」だ。「ラングラー」を中心として独自の世界観を日本でもしっかりと伝えている。販売網を整理して、ファンイベントなどを含めてカスタマーケアに注力していることが、新たなユーザーを開拓することにつながっている。
そんな成功例とは対称的に、日本上陸戦略がうまくいかなかったアメ車たちがいろいろある。いくつか紹介してみたい。
まずは、トヨタ「キャバリエ」だ。ゼネラルモーターズ(GM)の中型車「キャバリエ」をトヨタにOEM(相手先ブランド製造)供給したモデルである。GMとトヨタといえば、現在はテスラの工場である、北カリフォルニアの旧NUMMII(ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング)のように協業体制を敷いていた時期があり、キャバリエもそうした2社の関係を踏まえた発想だった。
だが、アメ車をそのまま日本車に改装したようなクルマであり、ユーザーの関心はあまり高まらなかった。
一方で、GMがグローバル市場も見据えて幅広い世代に向けた新たなるアプローチとして望んだブランドが「サターン」だった。日本国内で積極的にセールスプロモーションを展開していたことを思い出すが、結局サターンは日本から撤退を余儀なくされた。個人的な感想としては、新しさを強調し過ぎたことで、アメ車どころか無国籍車というイメージになってしまったのではないだろうか。
GMといえば、いまはなきポンティアックの中堅モデルである「グランダム」も日本で正規販売された時期がある。GM各ブランドで部品共通性をもたせるなかで、デザイン等でポンティアックらしさを生み出したモデルなのだが、日本ではそもそもポンティアックに対する認識はほとんどなく、グランダムが日本に根付くことはなかった。
そのほかには、クライスラー「ネオン」もいた。同社経営陣が肝入りで研究開発したコンパクトカーだったが、コンパクトカー激戦区の日本ではネオンらしさをユーザーに十分理解してもらえないまま販売が終わった印象だ。
こうして振り返ってみると、日本で売れるアメ車は日本車とは正反対の強い個性が必要なことがわかる。