
この記事をまとめると
■ヴィジョンEQシルバーアローはメルセデス・ベンツが伝説的レーサーを現代EVに再解釈したもの
■750馬力や可変リヤウイングなど性能とデザインが融合した象徴的コンセプトカー
■仮想レースやサウンド演出を備えることでEVの未来像を提示し大きな存在感を放った
メルセデス・ベンツが示した「未来の矢」
メルセデス・ベンツのEVディビジョン「EQ」がブランドイメージを飛躍的に向上させた立役者は、ほかでもない「ヴィジョンEQシルバーアロー」というイカしたコンセプトカーでしょう。同社にとって宝物のようなペットネーム、シルバーアローが冠されただけでなく、伝説的なレーシングカーをオマージュしたスタイリングや、当時としては最先端だったインフォテイメント要素を盛り込むなど、EV界の激震は半端ないものでした。
2019年のフランクフルトショーはEQ初の市販モデル(EQC)がリリースされた翌年のことでした。無論、ホットなEQCのお披露目的な要素も垣間見えたものの、ショーの本命はメルセデス・ベンツのヴィジョン、すなわち彼らが考え、目指すEVの方向性だったかと。そこに現れたのが全長5.3メートルに対して全幅1.0メートルそこそこというシングルシーターのヴィジョンEQシルバーアローでした。
シルバーアローとは、1930年代および1950年代にメルセデス・ベンツが走らせたレーシングカーのペットネームで、いずれの時代も世界を圧倒したことで知られています。ちなみに、のちにアウディに吸収されたアウトウニオンにもシルバーアローと呼ばれる最強マシンがありましたが、商標権をメルセデス・ベンツに買い取られています。
とはいえ、ヴィジョンEQシルバーアローはレースを想定したものではなく、前述のとおり彼らのフィロソフィーを体現したもの。ですが、シルバーアローの名を冠する以上は伝説的マシンを大いに意識していること間違いありません。たとえば、80kWhのバッテリー容量からシステム合計750馬力を発揮して、0-100km/h加速も3秒以下。いまでは驚くほどのパフォーマンスではありませんが、フランクフルトでの発表時には誰もが耳を疑う数字だったのです。