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乗用車のように自動ブレーキが普及すれば事故が減る……ってワケにはいかない! トラックやバスの安全装備普及は想像以上に難しかった (2/2ページ)

乗用車のように自動ブレーキが普及すれば事故が減る……ってワケにはいかない! トラックやバスの安全装備普及は想像以上に難しかった

この記事をまとめると

■観光バスには衝突被害軽減ブレーキが装備されるようになってきた

■路線バスでは乗客の転倒リスク防止の観点から非装着の場合が多い

■トラックの世界でも衝突被害軽減ブレーキが普及しているが評判はイマイチだ

路線バスには衝突被害軽減ブレーキがほとんどついてない

 あらゆる職業で働き手不足が深刻となっている日本だが、その最たるものとしてよくメディアにも登場してくるのがバス運転士となる。

 仕事にかかる負担や責任を考えると、給料が安いといった収入面や、土曜・日曜が決まって休めないというよりは、年間休日数自体が少ないといったところや、交通事故発生リスクという精神的負担が大きいようである。

 貸切(観光)バスでは、衝突被害軽減ブレーキの義務装着など、安全運行を支援するさまざまなデバイスが装着されるようになったのだが、路線バスではそのようなデバイスといえば、健康起因などにより運転士が走行中にバスを運転できなくなった場合、所定のボタンを押すことでバスが緊急停止する「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」が義務装着されるようになったくらい。それでも、走っている路線バスのなかでEDSSが装着されている車両はまだ少ないのが現状となっている。

 いまどき乗用車ならば当たり前のように装着されている、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)すら路線バスには装着されていない現状をみて、運転士を志そうとするひとの家族が運転士になることへ反対するということも珍しくないようである。

「なぜ装着しないのか?」というのは、単に製造コストといった問題だけではない。仮に客席以外、つまり立ったままの乗客がいるなかで、乗用車のような感覚で自動ブレーキが作動してしまうと、車内転倒事故を誘発してしまうことも大きいようである。

 路線バスに乗っていると、「立ったままご乗車のお客さまはつり革や手すりにつかまってください」と車内放送が入るのは、バスのような大きな車両がやむなく急ブレーキをかけると、何かにつかまっていても、車内で吹き飛ばされるといった表現が似合うような状況となるので、まず立っていれば、転倒はまぬがれないといってもいいだろう。

 最近は最後列席の真ん中部分を着席禁止にするバス事業者が多いが、これも急ブレーキがかかると座っていても前方に吹き飛ばされてしまうことを防ぐ意味がある。

 路線バスが思い切りブレーキを踏んで緊急停止を試みるということは、よほど緊急性が高くないとまず起こらない。バス運転士は、不測の事態を避けるためにも細心の注意を払って日々運転しているのである。

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