
この記事をまとめると
■近年はほかのレースカテゴリーからラリーへ転向して活躍している選手が増えている
■一方でまったく異なる異業種からラリーに飛び込んできた選手たちも存在する
■元プロボクサーの塙 将司選手と元アイドルの梅本まどか選手に直撃取材した
レースの枠を越えて異業種からラリーへ飛び込んでくる選手がいた
レーシングカート、フォーミュラなどのレース競技やジムカーナなどのスピード競技からラリー競技にチャレンジ。WRCで活躍中の勝田貴元選手を筆頭に、近年はほかのカテゴリーからラリーへ転向し、活躍している選手が少なくない。
レースにしてもジムカーナにしても、ラリーと同じ「4輪の乗り物」を使用したモータースポーツであることから、ラリーでもその経験が生かされていると思われるが、まったく異なる業界からラリーに飛び込んできた選手たちは、ラリー競技にどのようにして対応しているのか?
10月3〜5日に開催された全日本ラリー選手権・第7戦「久万高原ラリー」でも、そんな異業種からのチャレンジャーたちが集結。具体的にはTHREE FIVE MOTORSPORTのドライバーとして、23号車「555 CTE CUSCO WMDL GRヤリス」でJN-2クラスに参戦した塙 将司選手は、元プロボクサーであり、クスコ・レーシングのコ・ドライバーとして29号車「CUSCO WM DL GRヤリス」でJN-2クラスに参戦した梅本まどか選手は元アイドルだ。
ふたりはなぜ、まったく異なるジャンルからラリーにチャレンジしたのか? そして、そもそもボクシング/アイドルとラリーに共通点はあるのだろうか?
というわけで、異世界からのチャレンジャーをクローズアップ。まずは元ボクサーの塙選手を直撃!
──塙選手はラリー競技を始める前、ボクシングをやっていたんですよね?
塙選手:そうです。期間としては1年間ですが、ボクシングをやっていました。プロになって1試合をして勝ったんですけど、そのときに目をやってしまって、それでボクシングを辞めました。
──なるほど。ちなみにボクシングの前は何をやっていたんですか?
塙選手:僕は小学生、中学生、高校生とずっと野球をやっていたんですけど、高校を卒業してからは、2年間ぐらいレーシングカートをやっていました。フォーミュラにステップアップしたんですけど金銭的に厳しくて。それで、ボクシングなら拳ひとつで参加できるから、お金がかからないと思ってボクシングを始めました。
──なるほど。コストの関係でカートからボクシングに辿り着いたんですね。ところで目を悪くしてボクシングを辞めてから、なんでラリーを始めたんですか?
塙選手:ボクシングを辞めたあと、しばらく仕事をしていたんですけど、またモータースポーツをやりたいなぁ……と思いまして。知り合いのメカニックに相談したら、“レースよりラリーのほうがいいんじゃないか”とアドバイスを受けまして、それでラリー競技を始めました。
──ラリーを始めて何年目ですか?
塙選手:4年目です。1年目はTGRラリーチャレンジ、2年目は地方選手権で、3年目から全日本に参戦しています。
──いまJN-1クラスで活躍している福永修選手の会社に入ったんですよね?
塙選手:そうです。当時、建築関係の仕事をしていたんですけど、福永社長とお付き合いのある板金屋さんの社長の息子さんとたまたま同僚で、そのご縁で福永社長の会社に勤めることになりました。
──なるほど。割と短い間にカート→ボクシング→ラリーといったようにさまざまなことを経験されてきたようですね。ところで、ボクシングとラリーに共通するものとして、「どんなときでも冷静に」と書いていただきましたが、その理由は?
塙選手:僕の欠点でもあるんですけど、ボクシングでもラリーでも熱くなりすぎると、まわりが見えなくなってくるので、両方とも冷静さが必要です。
──ほかにも共通点はありますか?
塙選手:ボクシングもラリーも瞬時の判断が必要ですね。あとはイメージ力も重要です。ボクシングはただ殴り合っているように見えますが、フェイントやパンチの組み立てが重要で、それをイメージしながらやっているんですけど、それはラリーも同じで、ドライビングのイメージが重要です。そこは、すごく似ていると思います。
──体力面的にはどうですか?
塙選手:ボクシングのほうが、めちゃくちゃキツイです。長いラリーだとしんどいという人がいるけれど、僕にはしんどい理由がわからない(笑)。
──ちなみにボクシングの魅力は?
塙選手:お金がかからないところです(笑)。
──ラリーの魅力は?
塙選手:僕はそんなに体が大きくないので、高校時代に野球をやっていたとき、体格的に厳しい部分もありましたが、ラリーでは体が大きくなくても操作できるので、そこはフェアな部分で面白いです。
以上、塙選手のインタビューをまとめたが、まさに塙選手は異色のキャリアのもち主で、なかなか興味深いドライバーだ。