
この記事をまとめると
■近年のクルマのバンパー左右にある小さな穴はデザインのための装飾ではなく機能をもつ
■「エアカーテン」と呼ばれる整流機構を生みタイヤの乱流を抑えている
■空気抵抗を減らし燃費や操縦安定性を高める現代車ならではの空力技術である
バンパーの小さなインテークは見えない空気のチューニング
フロントバンパーの左右に小さなエアインテークが設けられているクルマは多い。デザイン上のダミーかと思って近づいてみれば、しっかり穴が開いており、フロントのタイヤハウスに向かっている。このエアインテークの狙いとはなんなのだろうか。
ひと昔、いやふた昔前であれば、リップスポイラー部分のエアインテークからブレーキに向けてダクトを設置して、ブレーキを冷却するという改造はモータースポーツでの定番だった。いまでも、サーキット走行を楽しんでいるユーザーはブレーキ冷却ダクトをカスタマイズしているだろう。
しかしながら、ミニバンやSUVなどのフロントバンパーに設けられているエアインテークが、ブレーキ冷却用だとは思えない。仮にレーシーな演出のためにブレーキダクト風のデザインを施すのであれば、実際に穴は開いていないはずだ。
なぜなら、一般論としてエアインテークを設けることは空気抵抗を増やすことにつながり、燃費を悪化させるからだ。ラジエターを冷却するためのグリル開口面積でさえ燃費とのバランスを考えて設計している現代において、無駄な穴を設けることはあり得ない。
つまり、ミニバンやSUVなどのフロントバンパーに設けられた小さなエアインテークには意味がある。結論をいえば、それはかつてのような冷却用ではない。タイヤの回転による乱流を整えるために開けられている。その目的はフロントタイヤ側面に「エアカーテン」を生み出すことだ。
