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いきなりタイヤの全開パフォーマンスを引き出せる魔法の「電気毛布」! タイヤウォーマーがF1ぐらいでしか見かけなくなったワケ

いきなりタイヤの全開パフォーマンスを引き出せる魔法の「電気毛布」! タイヤウォーマーがF1ぐらいでしか見かけなくなったワケ

この記事をまとめると

■タイヤは温度依存が大きくたとえばF1では高温まで加熱して使用する

■多くのカテゴリーでは機材コストと環境負荷低減を理由にウォーマーの禁止が進んでいる

■一方で禁止には安全面の懸念もありF1でも議論が続いている状況だ

なぜF1だけが使いつづけている?

 寒くなってきて、朝布団から出られなくなったり、コタツのぬくもりが恋しい季節。寒いと身体も固まるが、ゴム製品も固くなる。タイヤも温まらないとグリップしてくれないので、作動温度領域の高いレーシングタイヤを履くF1では、ピットでブランケットタイプのタイヤウォーマーを使用して、事前にタイヤを温めてから走行しはじめるのが定番だ。

 しかしF1以外に目をやると、WEC世界耐久選手権や日本のスーパーフォーミュラ、スーパーGTなどでは、軒並みレギュレーションでタイヤウォーマーの使用を禁止している。なぜなのだろう?

 理由は大きくわけてふたつある。ひとつは機材コストを削減するため。F1参戦時代にブリヂストンの開発本部長を務めていた浜島裕英氏によると、レース用のタイヤウォーマーは1台ぶんで新車の乗用車が買えるほど高額とのこと。

 原理的には電気毛布と同じようなものだが、F1ではタイヤの表面温度を80度以上に上げる必要があり、温度の規制が入った2022年以降でも、ウォーマーでタイヤを加熱する際の温度はフロントタイヤで最高100℃、リヤタイヤで最高80℃となったので、かなり高温にできる機能をもったウォーマーが求められていた。

 もうひとつは環境負荷の低減のため。これも元ブリヂストンの浜島氏によると、国内レースでタイヤウォーマーを使いはじめたころ、タイヤウォーマーを使用するために多くの電力が必要になり、たびたびサーキットのブレーカーが落ちたらしい。

 モータースポーツ界全体でサステナビリティ(環境負荷の低減)への意識が高まるなか、タイヤを温めるために大量の電力を消費して環境への負荷を増やすことは時代に逆行することになるので、F1でも将来的にはタイヤウォーマーの使用禁止が検討されている。

 一方で、タイヤウォーマーを禁止することで、冷えたタイヤのままコースインすることになりスピンなどのインシデントを引き起こすリスクがあるという議論もある。

 冷えたタイヤを上手に温めるのもドライバーの技量のうちともいえるし、温まりやすくサーマルデグラデーション(熱ダレ)の影響が小さいタイヤを作るのもタイヤ開発者の腕の見せどころともいえるので、難しいところではあるが、おそらく近い将来F1でもタイヤウォーマーが禁止になることだろう。

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