
この記事をまとめると
■三菱の新型「デリカミニ」は4WD性能を煮詰めたことが大きな特徴だ
■徹底的に磨かれた足まわりで背高な軽とは思えぬ悪路走破性を誇っている
■車内からの視界改善と先進装備の搭載で日常の安全性と快適性が向上した
デリカの遺伝子を色濃く受け継ぐ進化を遂げた
三菱が送り出した新型デリカミニは、スーパーハイトワゴンという軽自動車の大枠にありながら、同社らしい悪路走破性への執念を色濃く残したモデルだ。開発陣は今回の新型に対し、4輪駆動仕様に限って徹底したチューニングを施したという。
これは単なる乗り心地の改善ではなく、クロスカントリー路を想定してサスペンションストロークを積極的に稼ぎながらも、入力(突き上げ)に対して丁寧にいなす方向のバネ特性で、以前にも紹介した高いオフロード性能を成立させるものだ。
三菱開発チームによれば、今回の4駆チューニングは日産側の考え方とは方向性が異なっていたという。日産は市街地での実用領域に重点を置き、オフロード性能を過度に追求する必要性は低いと判断していた。
一方で三菱は、「デリカ」の名を冠する以上、走破性は外せない価値であると位置づけ、ストローク量とロールコントロールに徹底的に向きあった。
スーパーハイトワゴンは重心が高く、ロール量が増えやすい。通常はタイヤの剛性で抑え込むところだが、今回はサスペンション側の動きの質を磨き、ロールの立ち上がりを滑らかにしつつ過渡的な姿勢変化を最小限に抑える方向でまとめている。
新型では前輪のハブナックルがアルミ化され、ベアリング径も拡大。中空スタビライザー(これらは日産ルークスと共用)の採用によりロール剛性は約20%向上させているという。軽量化とスタビ効果の両立により、バネレートを下げながらも車体姿勢をしっかり支える構造となっているのだ。
試乗は千葉県・もみじロード周辺のワインディングの一般道を中心に行われた。まず特徴的なのが、発進前の周囲確認を高精度に行えるマルチビューカメラとタイヤ切れ角表示である。
芝生のラフロードを進む際は、石や段差を把握したうえで進入できるため、小型SUVのような信頼感がある。スノー路や悪路でハンドルを頻繁に切る場面でも、切れ角表示は有効だ。
特筆すべきは5種類のドライブモード(パワー/エコ/ノーマル/グラベル/スノー)が選択できること。モードごとにエンジンレスポンスやASC(アクティブスタビリティコントロール)制御が切り替わるのは、軽自動車としては初の高度な構成であり、走行状況に応じた制御が極めてきめ細かい。
これは三菱の4駆制御技術グリップコントロールの積み重ねが、ついに軽自動車クラスにも反映された好例といえる。ヒルディセントコントロールは30km/h以下で制御を開始し、雪道の下り坂での安心感は高い。
カヤバ製の新設計ダンパー「Prosmooth(プロスムース)」は、初期減衰を高めているが、その動作はじつに緻密である。路面の突き上げを過度に伝えず、衝撃をうまくいなして通過する。ハーシュネスが小さく抑えられていることから、乗り心地は軽自動車の枠を明確に超えている。
15インチホイールと60扁平タイヤを採用し、最低地上高は16cmを確保。雪道や悪路などでも十分な走破性が期待できる設定だ。
パワーモード選択時には坂道でエンジン回転が上がる傾向にあるが、必要な駆動力は確実に確保され、スーパーハイトの大柄な車体を軽快に押し出す印象である。だが、加速時のエンジン騒音はまだ改善の余地がある。今回、遮音性能を大幅に高めフロントに特殊遮音フィルムガラスを採用。側方や後方の遮音材も追加されている。しかし、とくにキックダウン時のエンジンノイズは、従来の三菱製エンジンに比べて余裕のある中低速トルクが感じにくく、日産・ルノー系ユニットの特性が色濃く出ている。
一方、ラバーフィールの残るEPS(電動パワステ)については今回手が入っていないため、次期車での改善を検討しているという。
