
この記事をまとめると
■英国の少量生産メーカーが失われたライトウエイトスポーツの思想を現代に蘇らせた
■ミッドシップ後輪駆動と徹底した軽量設計でアシストの類は極力オミットされる
■実用性や仕上げ品質も高く唯一無二の価値を備えたモデルといえるだろう
過熱するパワーウォーズに対するアンチテーゼ
1960年代前後に全盛期を迎え、いまでもカーマニアを惹きつけて離さない「ブリティッシュライトウエイトスポーツ」。読んで字の如く、英国産で軽量コンパクトなスポーツカーを意味するジャンルで、ロータス・エランやMGミジェット、トライアンフ・スピットファイアなどが代表的なモデルとして挙げられるが、いまではもはや絶滅しているというのが現実だ。トライアンフやオースチン・ヒーレーなど、そうしたモデルを製作していたメーカーそれ自体がほとんど消滅し、辛うじて現在でも名を残すロータスやMGも、中国資本参入の影響もあり元来の姿とはまったく異なるブランドとなってしまった。
そんななかでも伝統の灯を消すまいと奮闘するメーカーが、「ウェルズ・モーターカーズ」だ。
英国ウォリックシャーに拠点を置くこの小さな企業は、ロビン・ウェルズというひとりの起業家によって2014年に興された。「自分が乗りたい理想のスポーツカーが存在しない」と感じたウェルズは、自らの手でそれを作ることを決断。開発には約7年をかけ、2021年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで公開後、最初の”ファウンダーズ・エディション”を公開し、その25台は即完売。2023年から本格的な生産が始まった。
「ヴェルティージュ」と名付けられたそのモデルのパッケージングは、折り曲げ・溶接・接着されたスチール製モノコックをベースに、前後にチューブラースチールのサブフレームを組み合わせ、コンパクトなエンジンをミッドに搭載するというもの。サスペンションは前後ともアルミ製のアームをもつダブルウイッシュボーンを採用し、ロアアームについては前後共通設計として補修性の高さも確保しているとのことだが、詳細なジオメトリなどは公開されていない。
ブレーキとステアリングは共にアシスト非装備で、280mmディスクのブレーキペダルと、直結したラック&ピニオン式ステアリングによるダイレクトな操作感が設計の核心となっている。要するに、現代のクルマが失った「ナマ」の操作感が、ヴェルティージュには残されているというわけだ。
ボディパネルは複合樹脂製で製で、ドアはマクラーレンF1を彷彿とさせる二面角跳ね上げ式のディヘドラルタイプを採用。開口時にボディ外側に出る幅は約4cmで、狭い駐車場でも乗降しやすい設計だ。全幅は1750mmに抑えられているが、これは「ほとんどのコーナーで1本の理想的なラインを描ける幅」として意図的に設定された数値だといい、全長も3944mmとコンパクトに抑えられる。現行ND型ロードスターのそれが3915mmだといえば、サイズ感が想像しやすいだろうか。
