
この記事をまとめると
■BMWにおける「M」は同社のスポーツ部門を担う部門だ
■創立当初から「ブルー」「ネイビー」「レッド」の3色をコーポレートカラーとしていた
■レースシーンで使用されて以来小変更を重ねつつ現在に至るまで使われている
伝統のエンブレムに使われる色の意味
クルマのエンブレムにまつわるエピソードは、歴史を紐解くことに等しいもので、クルマ好きならずとも興味をひかれるのかと。とはいえクルマ好きにとってはバッカレラ伯爵からいただいた(フェラーリ)だの、創業地の紋章(マセラティ/ポルシェ等)だの、もはやお馴染みのベーシック。ですが、エンブレムに使われる色の由来となるとどうでしょう。たとえば、BMWのスポーツ部門たる「Mモデル」のブルー、ネイビー、そしてレッドにはそれぞれちゃんとした意味がもたされているのです。
BMWのMモデルは、いうまでもなくモータースポーツに端を発したプロダクト。MというイニシャルにしてもMotorsportの頭文字だと知らない人はいないはず。このMモデルは、1972年にBMWの関連会社として設立された「BMW モータースポーツ社」による製品であり、またレース活動のアイコンでもありました。この当時、BMWは3.0CSLでヨーロッパ・ツーリングカー選手権に参戦しており、「ならばレーシングカーにもMのアイデンティティを」と、Mの3色を決めたとされています。
ブルーはいうまでもなくバイエルンブルーであり、BMWそのものを象徴。レッドは、今でこそレースのイメージとされていますが、じつはレーシングカーの3.0CSLにスポンサーとなる予定だったテキサコオイルのコーポレートカラーだったとする説が有力です。そして、現在はネイビーですが設立当初はパープルが選ばれていました。オールドファンにとってはこちらのほうがなじみ深いかと思いますが、意味合いとしてはブルーとレッドの融合、すなわち「BMWとレースの調和」みたいなニュアンスを表しているのだそうです。
この3色は1973年のツーリングカー選手権に出場した3.0CSLで実際に使われていますが、皮肉なことにテキサコのスポンサー獲得はならず、従来どおりカストロールのロゴが使用されています。そして、1978年になると初めてMの名を冠した市販車「M1」が登場しているのですが、サーキット仕様車、つまりはM1プロカーでもMの3色が使われただけでなく、初めてMのイニシャルもデザインに取り込まれています。このデザインは誰あろう、ジョルジェット・ジウジアーロで、ご存じのとおりM1のデザイナーその人です。
さらにジウジアーロは3色のストライプとMを合体させ、のちに市販車につけられたエンブレムのデザインもしており、2020年にリデザインされるまで使われ続けました。なお、パープルがネイビーに変更された理由は公表されていませんが、モノクロ写真でも識別しやすいといった理由が大きいのかと。ちなみに、Mの文字色もそれまでのシルバーからホワイトに変更されており、ちょっとした識別点となるでしょう。
ところで、2022年にMモータースポーツ(現BMW M社)が創立50周年を迎えたことで、市販MモデルのメインエンブレムがMの3色で囲われたものになっていたこと、ご記憶の方もいらっしゃるかと。このエンブレム、じつは「2022年3月〜2023年3月生産分」にしか許されなかった限定仕様。つまり、現在このエンブレムがついたクルマは、いわば「50周年パーティの招待状を握りしめて走っているラッキーな個体」なのです。今となっては「あ、あいつ2022年に買ったな!」とひと目でバレてしまう、ある意味で「年式特定トラップ」といえるでしょう。
