
この記事をまとめると
■SUBARUが全日本ラリー第3戦からBRZベースの新マシン”スペックZ”を投入する
■スペックZはFRクーペのBRZをAWD+ターボ化
■ライバルであるラリー2車両勢に対抗すべく軽量&低重心で勝負を挑む
新マシン”スペックZ”が全日本ラリー第3戦でデビュー決定
2026年3月21~22日にモビリティリゾートもてぎで開催された「スーパー耐久シリーズ2026」にて、全日本ラリーへ新たにBRZを投入すると発表したSUBARU。AWDターボに“魔改造”された「SUBARU Boxer Rally spec.Z(スバル ボクサー ラリー スペック ゼット)」が、ついに姿を現した。
まず注目すべきは、モータースポーツと市販車開発の連携を強化するべく発足した、スバルの新組織だ。同社は、これまで掲げてきた「安心と愉しさ」に加え、その個性をさらに尖らせるために「Performance(走り)」と「Adventure(冒険)」というふたつの軸を際立たせる戦略を打ち出した。その象徴として、4月に「商品革新本部」および「スポーツ車両企画室」を新設。レースの現場で鍛えられた知見を、車両やパーツ開発にフィードバックしていくという。かつてスバルがWRCで世界を席巻した時代のような、現場の技術がダイレクトに市販車へ還元される流れが復活したのだ。
その第1弾が、現在スーパー耐久(S耐)ST-Qクラスで戦っている「SUBARU HIGH PERFORMANCE X version II」(ハイパフォX)である。ただ、今回のBRZに関しては、必ずしも市販車につながるものではない。ライバルに勝つには“BRZしかなかった”のだ。
ここ数年の全日本ラリーで苦戦してきたSUBARUと新井敏弘選手。2023年にはWRX S4ベースの新マシンを投入するも、GRヤリスRally2やシュコダ・ファビア R5といったライバルたちの後塵を拝する状況が続いていた。SUBARU側も、当初はS4で十分に戦えると考えていたそうだが、ライバルたちは想像以上に手強かった。
S4もアベレージスピードは高く、加減速が少ないコースではライバルとの差は少なかったというが、道幅が狭くツイスティなコースが多い全日本ラリーでは、ボディサイズの大きさや重さが不利になっていた。そこで、ライバル並みの車両重量やサイズに近づける必要があると判断。予算も含めて正式にGOサインが出たのは昨年11月だったというが、そこから急ピッチでBRZベースの新マシンが制作されていった。
ちなみにS耐のハイパフォXは5ドアのクロストレックのボディがベース。ラリーにおいても、スバルといえばレガシィやインプレッサWRXなど、セダンやハッチバックを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、「インプレッサにしてもWRXにしても重心高が高く、大きな改善は見込めません。技術的にベストな解はBRZでした」と語るのは、スポーツ車両企画室の山田大輔さん。とはいえ、本来FR(後輪駆動)のスポーツカーであるBRZをAWD(四輪駆動)化し、さらにターボを積むのは、もはや別のクルマを作るに等しい作業である。
「フロントまわりの外装部品などを軽くして、エンジンは後ろに下げる……重いものをクルマの中心に寄せ、かつ低い位置に配置することで、BRZがもともともっている低重心さを極めました。エンジンはS4用のFA24ではなく、より耐久性が高いと判断したBRZ用のFA24-D4Sをベースにターボをつけています。これまでの反省としてエンジンの耐久性や信頼性に問題が生じたことを踏まえて、今回はレスポンスと耐久性を主眼に開発を進めています」(山田さん)
エンジンには規則に従ってリストリクターも装着。最高出力は280馬力以上、最大トルクは500Nm以上と発表されている。
また、AWD化にあたっては、S4のシステムを使うなども検討されたというが、結論として、前輪を駆動するディファレンシャルギヤをエンジンの下に配置する方法が採用された。
「“勝負にこだわる”と考えたとき、エンジン搭載位置を後方に下げることが不可欠でした。その結果、フロントデフをエンジン下に配置するレイアウトを採用しました。センターデフを持たず前後を直結するAWD機構はSUBARUの量産車では採用していませんが、ラリー車では珍しくない構成です。サイドブレーキを引いた際には後輪への駆動をカットして一時的にFF状態にすることで、サイドブレーキターン時の挙動を改善できると考えています」
エンジンとミッションをキャビン側に寄せ、デフをエンジンの真下に置くという大規模なレイアウト変更には、かなり苦労した……いや、いまも苦労している最中だという。
