
この記事をまとめると
■空冷エンジンは軽量で低コストなため小型車に最適だった
■排ガス規制強化で緻密な温度管理が必要になったために空冷エンジンは消えた
■エンジンの温度管理や暖房問題でも空冷は水冷に敵わなかった
小型車には空冷エンジン採用例が多かった
軽自動車を含め、小型車で重宝されていた空冷式エンジンは姿を消した。空冷式エンジンは、空気で冷やすため、ラジエターや水を循環させる配管とポンプなどが不要になり、部品点数を減らすことができ、小さなクルマに向いている。部品点数が少ないぶん、製造原価を抑えることにも通じる。
一方で、たとえばポルシェのような高性能車種でも、ファンを使って強制的に冷却することにより、空冷エンジンを1997年まで911で採用し続けた。しかし、5世代目となる1997年に、いよいよ水冷式に切り替えることになった。
日本の例では、ホンダN360は空冷エンジンだったが、その後継といえる1971年のライフから、水冷エンジンに切り替わった。本田宗一郎は、エンジンを直接空気で冷やす空冷式エンジンを好んだと伝えられている。水冷式は、エンジンの熱をいったん水へ伝え、その水をラジエターで冷やすことになり、二度手間になると考えたようだ。
しかし、ホンダにしてもポルシェにしても、またほかのメーカーも、空冷から水冷へ変更した。じつは空気より水のほうが熱交換する能力(冷却や温度管理)が格段に優れているからだ。そのうえで、空冷から水冷へ切り替わった最大の理由は、排出ガス浄化にある。1970年の米国カリフォルニア州におけるマスキー法により、排出ガス規制が、世界的に厳しさを増した。排気中の有害物質の浄化の義務付けである。
ホンダがCVCC(複合渦流調速燃焼方式)で最初に浄化基準を達成したあと、燃焼後の排出ガスを触媒で後処理する方法が世界的に広まった。いずれの手法にしても、まず有害物質を減らすには、使う燃料の量を減らすことにある。少ない燃料で燃焼を成り立たせるには、エンジンの温度管理が不可欠だ。緻密な温度管理はまた、排気となってエンジンから出たあとのガスを浄化する触媒を活性化するうえでも、混合気の燃焼温度を適切にする必要がある。
エンジンの温度管理を厳密に行うには水冷が適している。このため、世界的にエンジンは水冷式に絞られた。水冷式は、単に冷却水(クーラント)をラジエターとエンジン間で循環しているだけでなく、サーモスタットを用いて水温調整する。それが、エンジンの温度管理につながる。
ほかに、水冷であれば、暖房のための熱の利用も可能になる。エンジンで温められた湯を、適宜ファンを通じて送風すれば室内を温められる。空冷式で温められた空気を室内へ送り込んだのでは、エンジンルームのオイルやガスの匂いまで室内へ入ってしまう不都合がある。そうした匂いもクルマらしいと感じられる愛好家は別として、多くの人は清浄な空気での暖房を好むだろう。
こうしていまや、空冷式エンジンは姿を消すことになった。一方で、電気自動車(EV)は、水冷式エンジンのような暖房用の湯を活用できないので、効率のよい空調の仕方で苦労することになった。温度の高低差を利用して熱を有効活用するヒートポンプ式空調のほか、シートヒーターやハンドルヒーター、あるいは輻射熱の応用など、電力消費を抑えながらの快適性確保が求められている。
