
この記事をまとめると
■シート掛けは荷物保護だけでなく走行安全を支える重要作業
■水の逃げ道や風の流れを考えた張り方に熟練の技がある
■固定方法や点検の習慣が事故防止と安全輸送につながる
美しく張られたシートの裏側
平ボディトラックの荷台に掛けられているシート。知らない人からすれば、ただの布にしか見えないだろう。しかし、トラックの荷台にかけられているシートは、荷物を雨や汚れから守るだけでなく、走行中の風圧、振動、横風、巻き込み風に耐えながら、荷台全体を安定させるための重要な装備なのだ。ただ上からかぶせれば終わりという作業ではなく、現場では「シートは掛けるものではなく張るもの」といわれることがある。それほど張り方ひとつで仕上がりも安全性も変わるのだ。
平ボディのシート掛けでまず大切なのは、荷物の形を読むことだ。積載物によってシートの当たり方がまるで違ってしまう。角が立っている荷物なら、そのままシートを張ると走行中の振動でシートが擦れて破れる。そこで角当てを入れたり、古い毛布や養生材を噛ませたりして、直接シートに負担が掛からないようにする。見た目には地味だが、このひと手間を省くと雨漏りやシート破損につながる。
さらに雨対策で重要なのは、水の逃げ道を作ることだ。シートの上に水がたまると、その重みでシートがたるみ、たるんだ部分がさらに水を呼ぶ。だから荷物の上面が平らな場合でも、あえて中央を少し高くしたり、角度を作ったりして、水が左右に流れるように張るという技術が必要なのだ。とくに長距離を走る場合、出発時にはきれいに張れていても、雨と風と振動で少しずつシートは動く。最初から水が抜ける形を作っておくことが大事ということだ。
ただし、じつはシートの最大の敵は雨より風である。走行中のトラックには正面からの風だけでなく、キャブ後方で巻く風、対向車や大型車とのすれ違いで生まれる風、橋の上や海沿いで受ける横風が加わる。シートに少しでもたるみがあると、そこが風をはらみ、バタつきはじめる。そのため、ベテランほどシートの面を風が流れるように、余計な膨らみを作らず張るという技をもっている。
さらに固定に使うゴムバンドやロープにも技術がある。単に強く引けばいいわけではなく、強く張りすぎればハトメやシート生地に負担が掛かり、逆に弱ければ風で暴れる。荷台のアオリに対して、どの角度で引くか、どの順番で締めるか、左右のテンションをどう揃えるかで仕上がりが変わる。前側をしっかり決めてから後ろへ逃がす人もいれば、中央を先に押さえて全体の形を作る人もいる。そこには現場ごとの癖と、ドライバーごとのテクニックがあるといわれている。
その証拠にシートの端の処理は差が出る部分だ。余った部分をそのまま垂らすと、風にあおられてバタつき、雨水を巻き込むことがある。荷台の下へ巻き込むのか、側面で折り返すのか、後部をどう畳むのか。こうした細かい処理で、走っているときの安定感が大きく変わる。後ろ姿を見れば、そのドライバーがどれだけシートに気を使っているかわかるという人もいる。
こうしたシート掛けは荷物を守るだけでなく、周囲への責任でもある。もし走行中にシートが外れたり、ロープがほどけたりすれば、後続車や歩行者に危険を及ぼす。だから出発前だけでなく、走行途中の休憩時に緩みを確認することもある。雨が降り始めたあと、風向きが変わったあと、高速道路に入る前など、経験のあるドライバーほど点検のタイミングを知っているのも平ボディのドライバーらしい部分だろう。
きれいに張られたシートには、荷物を濡らさないための知恵、風に負けないための工夫、 そして事故を起こさないための責任感が詰まっている、まさに職人技だ。平ボディトラックのシートはただの布ではなく、現場を知るドライバーの経験が、その1枚に張り込まれているといえる。
