
この記事をまとめると
■韓国映画は旧車まで徹底した時代考証を実施している
■『タクシー運転手 約束は海を越えて』などでは当時の車両を忠実に再現
■日本作品との小道具への姿勢の違いともいえる
劇中車に注目するのが楽しい韓国映画
2026年5月、韓国でスターバックスコーヒーへの不買運動が全土に広がった。これは、韓国の民主化運動を象徴するともいわれる1980年の光州事件を想起させるキャンペーンを実施し、韓国のひとたちからの猛烈な批判が起こり不買運動に発展したというものである。
1980年5月、軍事クーデターにより政権を握った当時の全斗煥大統領への抗議を光州市内で行っていた学生や一般市民と鎮圧のため出動した韓国軍とが衝突し学生と市民に多数の犠牲者が出たことから光州事件と呼ばれている。
この不買運動の発端となったのは「5.18タンクデー」と呼ばれるキャンペーンであり、この5.18はまさに光州事件が発生した日(5月18日)とされている。いつもと違う5月18日を迎えた2026年、日本ではCS放送の映画専門チャンネルなどで、光州事件そのものに関わるものや、当時の軍事政権時代を描いた韓国映画が多数放映されていた。筆者もそのなかの数本を実際視聴したのだが、当時の韓国を忠実に再現するとともに、劇中に登場するクルマも当時の車両がしっかり用意されていた。
登場してくるタクシーは韓国初のオリジナル国産車となる初代ヒョンデ・ポニー(1975~1985年)が用意され、VIP向けには当時韓国で現地生産されていたトヨタ・クラウン(クジラ[4代目])や、マツダの三輪トラックなど、歴史ドラマではストーリーもさることながら、いつも背景に映ったり登場してくるクルマに注目する筆者も納得するようなこだわりをもって登場させていたのである。
制作年の異なる映画を続けて数本観たのだが、いずれも街を走るクルマとしてヒョンデ・ポニーが大量に登場してくる。オリジナル国産車初ともされる初代ポニーであってもコレクターがそんなに多くいるとは思えない。撮影用に現行車をベースに架装しているのではないかなど思いを巡らせながら映画を観ている。
いわゆる「光州事件もの」で筆者が好きなのは、ソン・ガンホ氏が主演を務めた『タクシー運転手 約束は海を越えて』というものがある。ドイツ人ジャーナリストが光州市で起きている真実を探るため訪韓、ソウルでタクシードライバーをしているソン・ガンホ氏演じるタクシー運転手のクルマでソウルからタクシーで光州市へ向かい、さまざまな苦難をともにするなか友情を深めながら、無事ソウルへ戻り光州市で起きたことの真実が世界に伝えられるというストーリーである。
タクシーとして劇中に登場してくるのは初代ヒョンデ・ポニーばかりなのだが、主人公のタクシーは、マツダ・ファミリアプレスト(3代目ファミリア)の韓国生産版となる「起亜ブリサ」であった。劇中でもすでに過走行状態でエンジンの調子もいまいちという設定であったが、タクシーをはじめたころの生前の妻との思い出を大切にしたいという主人公の気もちがそこにあった。
ストーリーもさることながら、後編のカーチェイスには目を見張った。光州市内から脱出する際に軍部の追跡を受けるのだが、光州市内のタクシー数台が主人公を助けるために初代ヒョンデ・ポニーのタクシーで軍部が乗るジープ(おそらく双龍コランドー)に決死の体当たりを行うという展開となった。初代ヒョンデ・ポニーが次々に軍部の車両によって潰されていくシーンは見ごたえがあったとともに「もったいない」という気もちとなった。
