
この記事をまとめると
■ディーゼルエンジンは安価な燃料で動かせるメリットがある
■一方で出力を求めると排ガスの浄化が難しくなるデメリットがある
■環境問題が取り上げられるようになりディーゼルエンジンの需要が減りつつある
ディーゼルエンジンはこれからどうなる?
ディーゼルエンジンはその昔、オイルエンジンと呼ばれたという。燃焼温度が低い安価な石油燃料で動かすことができたからだ。のちに、発明者であるドイツ人のルドルフ・ディーゼルにちなんで、ディーゼルエンジンと呼ばれるようになった。
ディーゼルエンジンは、燃焼温度の低い軽油など、ガソリンに比べ揮発性の低い燃料を、スパークプラグ(点火栓)を使わず、ピストンの圧縮による空気の温度上昇で燃焼させる。点火系の部品を不要とし、原価が安くあがるだけでなく、空気を圧縮して高熱とするため、高圧縮比で運転することになり、効率が高いのが特長だ。つまり、燃費がよい。当時の圧縮比は、ガソリンエンジンの約2倍であった。
今日では、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないことから気候変動を抑制するのに役立つ。そこに注目して、2000年前後から、欧州でディーゼルブームが巻き起こった。それまで、小型車など経済性を重視する車種でディーゼルエンジン車が重宝されていた欧州では、軽油は必ずしもガソリンに比べ安くないが、燃費がよければ、そのぶん燃料を使う量が少ないことで結果的に経済性に優れることになる。
気候変動の抑制が重視されだすと、自動車メーカー(企業)単位でCO2排出量が総量規制され、燃費性能が高性能車や高級車でも求められるようになった。上級車種でのディーゼルターボが普及し、その影響は、2012年のマツダCX-5がディーゼル車を主力で発売したことなど日本にも波及した。
トヨタが、1997年にプリウスで投入したハイブリッド車(HV)は、開発の手間と投資、また部品点数の増加による原価の上昇につながるとして欧州では敬遠され、ディーゼルターボに注力した。ところがディーゼル車絶頂期かと思われた2015年、米国でフォルクスワーゲンによる排出ガス偽装が発覚、ディーゼル車に対する目が一気に厳しくなった。国民車を社名とするVWは、ディーゼル排気浄化に尿素SCR(選択触媒還元)を使うことをためらっていたからだ。それが、浄化と出力の両立を難しくしていた。
ディーゼルエンジンは燃費に優れるが、排気浄化でガソリンエンジンにかなわない。圧縮比を下げ、燃焼温度を下げて窒素酸化物(NOx)の排出量を減らし、なおかつ尿素SCRを併用しても、点火装置を使わず、低い圧縮比で燃焼させることは難しく、燃料の燃え残りである粒子状物質(PM)や炭化水素(HC)の排出に課題が出て、出力も下がる傾向になる。乗用域での出力確保のため、燃料消費を増やして排気浄化を緩めたのが、VWの偽装内容だ。
では、出力低下を補うにはどうすればいいか。解決策としては、モーターなどの追加で出力不足を補ったり、モーターを使わずに出力を維持しつつ、かわりに尿素SCRや、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)といった後処理装置が求められる。結果的にディーゼルエンジンは次々に原価を高める必要に迫られ、儲けが薄くなるばかりだ。利用者にとっては、尿素SCRを働かせるため、尿素水(AdBlue)の補充も必要で、軽油代のほかに追加出費となる。
今日のディーゼルエンジンは、ルドルフ・ディーゼルが追い求めた、経済性と効率に優れた内燃機関から遠ざかりつつある。現在のホルムズ海峡の問題により、燃料だけでなく、ディーゼルエンジン用オイルも供給の不安が取り沙汰された。
ディーゼルターボは、低速トルクと加速の伸びがよいとされたが、それならモーターのほうが優れる。バッテリー容量や、充電基盤が日進月歩であるいま、電気自動車(EV)であればそもそも排気ゼロで、CO2も大気汚染も問題ない。しかも、加速が鋭く、静かで爽快に走ることを経験すれば、もはやディーゼルに戻る意味は後退するしかないのではないか。
