
この記事をまとめると
■日本のトラックは道路事情や全長規制の影響からキャブオーバー型が主流となった
■ディテールにおいても日本独自の物流環境に合わせた進化を遂げてきた
■現在は自動運転や電動化など次世代物流への対応も進んでいる
道路事情と法律の影響で独自進化
トラックは物流の主役。日本では運転席がエンジンの上にある四角い「キャブオーバー型」が圧倒的多数を占める。しかし、映画や動画で見るアメリカの大型トラックは、フロントが長く突き出た「ボンネット型」が主流だ。この外観の違いこそ、両国の国土や道路事情とそれに基づく法律が生んだトラックの進化した歴史を雄弁に物語っているといってよい。
じつは日本のトラックも、1950年代から60年代にかけてはアメリカと同様にボンネット型が主流であった。当時は車両製造の技術的な問題もあったが、未舗装路が多かったために乗り心地やエンジンの整備性などといった面で優位性があったのだ。しかし、1970年代の高度経済成長期を迎えると状況は一変。都市部を中心に交通量が激増し、道路法や道路運送車両法による車両全長の規制の枠内で、いかに多くの荷物を積むかが至上命題となった。
全長を変えずに荷台の寸法を最大化するためエンジンの真上に運転席を配置してスペース効率を極限まで高めた結果、日本のトラックはキャブオーバー型の「四角い箱」に進化したのである。これに対して、広大な国土と直線主体のハイウェイをもつアメリカでは全長規制が日本ほど厳しくないため、空力性能、衝突安全性、広大なベッドルームスリーパーキャビンなどを確保できるボンネット型が今なお主流として君臨しているのだ。
日本のトラック進化は、単に形状の変化にとどまらない。日本の狭い道路や分刻みの正確性を求められる物流現場に合わせて、以下のような独自の進化を遂げている。
小まわり性能とミラー
都市部の交差点や狭隘な路地を曲がり切るため、前輪の切れ角が非常に大きく設計されている。また、アンダーミラーやサイドアンダーミラーを絶妙に配置し、死角を極限まで減らした。また、近年では高性能な電子ミラーの導入も始まっている。こういったことは、広大な敷地で大まわりができるアメリカではあまり重視されない。
ウイングボディの普及
側面が鳥の翼のように跳ね上がるウイングボディは日本で発展した架装である。これを使えばフォークリフトで側方から一気に荷物を積める。日本の手狭な物流倉庫における作業時間を劇的に短縮させた。
軽トラ
近年、アメリカの地方都市や農家では日本の軽トラックの高い実用性が評価され、大きなブームを巻き起こっている。アメリカの巨大なピックアップトラックに対し、日本の軽トラは過剰な性能を削ぎ落としたミニマリズムの極致。これもまた、日本の規格が生んだ偉大な進化のひとつといえよう。
現在、日本のトラックは世界でもっとも厳しい部類の排出ガス規制をクリアするために、クリーンディーゼルや尿素SCRシステムなどを導入して環境性能を高めてきた。さらに、衝突被害軽減ブレーキやドライバー異常時対応システム(EDSS)といったADASの搭載も進めている。
一方、物流業界では労働時間規制に伴う「物流の2024年問題」に対してさらなる効率化が求められている。今後は、高速道路における「後続車無人隊列走行」を見据えた自動運転技術や、電動化へのシフトが急ピッチで進むことになるだろう。限られた制約のなかで常に現場の要求に応え、独自の最適解を導き出してきた日本のトラック。その進化の歩みは、まさにわが国のものづくりの執念そのものである。
