デコって塞ぐのは違反行為! トラックの左ドアにある「小さな窓」の重要な役割

この記事をまとめると

■トラックの左側のドアには「巻き込み防止窓」がついている

■死角になる「左下」を目視できる機能をもつ

■ここの窓を塞いだりフィルムを貼るのは違反となる

トラックのドアについてる窓は重要な部品

 街なかを走る大型・中型トラックの助手席側ドアを見ると、下部に小さな窓が設けられているのを目にしたことがあるだろう。これは俗に「安全窓」や「巻き込み防止窓」と呼ばれる重要な装備なのだ。そこにはれっきとした法的根拠があり、運転時においても安全確保に高い効果を発揮している。

 大型トラックは運転席の位置が高く、前方の見晴らしもよい。その反面、車体のすぐ足元、とくに左側面には広大な死角が存在する。左折時に車両の左側にいる歩行者や自転車、あるいは並走する小型のバイクは、通常のサイドウインドウやサイドミラーだけでは、十分に捉えきれないことが多い。安全窓は、この「ドライバーから見えない左下の死角」を、直接目視するために設置されているのだ。

 この窓は、単にメーカーの親切心で付けられているわけではない。道路運送車両法の保安基準に基づいて設置されているのだ。法律上、自動車は「運転者が交通状況を確認するために必要な視野」を確保しなければならないことになっている。そのため、直前側方の死角を解消するための装置として、アンダーミラーなどとともに安全窓が設けられている。

「ミラーやカメラがあれば十分ではないか」と思う人もいるかもしれないが、実際の運行現場において安全窓の恩恵は極めて大きいという。ミラーは凸面になっているために距離感が掴みにくく、雨天時や夜間には水滴や光の反射で見づらくなるという欠点がある。

 それに対して安全窓を通した「生の目視」は、対象物の正確な距離や移動スピードを瞬時かつ直感的に把握できる。とくに、狭い交差点での左折時や自転車やバイクのすり抜けに対しては、この小窓から得られる情報によって巻き込み事故の1歩手前でブレーキを踏む決め手になるケースが少なくないのだ。

 トラックのドレスアップや車内プライバシーの確保を目的として、この安全窓に不透明なアクリル板(装飾板)をはめ込んだり、カッティングシートやスモークフィルムを貼ったりして外が見えないようにしている車両を見かけることがある。しかし、これは明確な違法行為(禁忌)。

 運転者が交通状況を確認するために必要な視野の範囲に係る部分(前面ガラスや側面ガラス)は、可視光線透過率が70%以上でなければならないと規定されている。安全窓は法律上「側面ガラス」の扱いとなるため、ここを遮蔽することは道路運送車両法違反(不正改造)に該当するのだ。

 さらに、車内に荷物を高く積み上げて窓を物理的に塞ぐ行為も、法が禁止する「運転者の視野を妨げるような積載」に抵触する。万一、この窓を塞いだ状態で巻き込み事故を起こした場合、前方不注意や安全確認義務違反の過失割合が大幅に加算されるリスクも高まるのである。

 今後この安全窓が完全に消滅し、電子ミラーのようなハイテク機器に100%代替されるかどうかについては、現時点の法制度やメーカーの動向を見る限り、すぐに移行するとは考えにくい。なぜなら電子機器には、システムの故障・カメラレンズの汚れや曇り・モニターの映像遅延などといった、固有のリスクがあるからだ。

「物理的な窓による直接目視」というもっとも信頼性の高いバックアップ手段を残しつつ、カメラやセンサーによる検知・警告を「併用」する形が、現在の安全設計における現実的な最適解とされている。高い安全性が求められる商用車の世界においてこの小さな窓が果たす役割は、電子化が進む時代にあっても依然として色褪せていないのである。


この記事の画像ギャラリー

新着情報