
この記事をまとめると
■レースチームのオーナーになりたい人はクルマ好きに少なくない
■日本最大級のプライベーター「Birth Racing Project」に運営費用について直撃
■一般的には車両の新車価格と同等かそれ以上の費用が必要になってくる
知られざるレースチームの運営事情
「いつかはレーシングチームのオーナーになりたい」。
そんな夢をもっている読者もいるのではないだろうか? もちろん、レーシングチームのオーナーになるためには莫大な予算が必要だ。
たとえば近年のF1チームでいえば、投資家および投資ファンドがレーシングブルズに対して30億ドル、日本円で約4900億円の買収をもちかけたり、メルセデスの評価額が60億ドル、日本円で約9700億円だったりとかなり高額だが、国内レースで活動するレーシングチームを作るためには、いくらくらいの予算が必要なのか?
というわけで、7月24日〜26日に大分県のオートポリスで開催されたスーパー耐久シリーズ第5戦「スーパー耐久レースinオートポリス」で、Birth Racing Projectのチーム代表、奥村浩一氏を直撃。ご存じのとおり、Birth Racing Projectはスーパー耐久のST-TCRクラスに19号車「BRP★NUTEC制動屋CUPRA TCR」、ST-USAクラスに250号車「BRP★HOJUST With SPACE MUSTANG DHR」を投入する大手プライベーターチーム。
奥村氏はチームオーナーでありながら250号車で参戦するドライバーでもあるが、プロアマ混合のビッグレース、スーパー耐久でレーシングチームを作る場合、どれくらいの予算がかかるのかを尋ねてみた。
──いきなりですが、レーシングチームを作る場合、いろんなものが必要だと思います。そのなかで、具体的にどんなものが必要ですか? まずはレーシングカーですよね?
奥村氏:クルマもそうですが、レーシングチームを作る場合、まず必要なものが“人材”です。メカニックやマネージャー、そしてドライバーが最初に必要で、クルマはそのあとになります。
──確かにドライバーは必要ですね。
奥村氏:大手スポンサーがついていて、潤沢な資金があればいいんですけど、立ち上げの段階からスポンサーがつくことは珍しいので、やはり、ドライバーのもち込んでくる資金が重要になってきますよね。つまり、チームにとってはドライバーがお客さんになるんですけど、チームオーナーとしてはドライバーが安全にレースを行えるように体制を整える必要があります。そのためにはメカニックが必要になるし、ガレージも必要になる。当然、工具や設備なんかも必要になります。
──なるほど。クルマの前に必要なものが多いんですね。
奥村氏:そうですね。メカニックやスタッフ、ガレージなどの目処がついてきてから、クルマを準備することになりますが、クルマはドライバーの活動予算に合わせて選択します。スーパー耐久であれば、ST-4クラスなのか、ST-3クラスなのか、という流れで準備していくことになりますが、チームを作るためにはここでも最初に“人”が必要になります。たとえば、メカニックの場合、GR86/BRZカップやヤリスカップなどのワンメイクレースであればメカニックは1名で十分ですが、スーパー耐久ではレース中で常時5名のメカニックが必要になるし、そこにマネージャーなどのスタッフを入れると1台体制でもミニマムで8名のメンバーが必要になります。
──うーん。スーパー耐久に1台でエントリーするだけでもそれだけのメンバーが必要なんですね。当然、人件費も必要になりますし、ガレージを準備するとかなりのスタート資金が必要になりますね?
奥村氏:ガレージのことを考えると、メカニックを外注する場合、個人でガレージをやっている方にチーフメカニックをお願いして、事前のクルマ作りからレースあとのメンテナンスまでお願いする形がベストだと思いますが、メカニックやスタッフ、ドライバーを含めて1番大切なことは同じメンバーで続けることです。1年ごとにメンバーが変わると知識や技術が蓄積できない。ドライバーやチームがクルマに慣れていくためには、どうしても2年間から3年間くらいの期間が必要で、そういった積み重ねがあってパフォーマンス、ひいてはリザルトもよくなっていくんですけど、理想と現実にはギャップがありますからね。新規チームのなかには、エンジニアやメカニックがコロコロと変わっていくこともあるんですけど、そうなると成績が出ないし、成績が出ないからスポンサーも集まらない。悪循環になって活動をやめてしまうチームもあります。
──レースでも人材が大切で、同じメンバーで継続することがポイントなんですね。ところで、Birth Racing Projectはプライベーターながら、かなり大きなチームですよね?
奥村氏:じつは日本で1番大きなプライベーターチームといわれています。スーパー耐久が2台で、BMR(注:BMWのM2 CSレーシングシリーズとMINIチャレンジの共催レース)に4台、そのほかに、全日本ラリー選手権やGR86/BRZカップやヤリスカップにも出場しているドライバーがいます。年間運用台数が1番多いときで11台ありましたし、年間で60戦ぐらい競技に出ていたので、確かに規模としては大きいし、20年ぐらい活動しているので、プライベーターチームとしては長く活動をやっていると思います。
