この記事をまとめると
■日本ではBEVバスが徐々に普及しつつあるがかつてほどの台数を見なくなっている
■導入した事業者がドライバーの意見により使わなくなった例が増えている
■日本には優秀なディーゼルエンジン車両があるのでBEV化を無理に進める意味はない
日本でBEVバスが普及しない背景とは
日本でも都市部を中心にチラホラと見かけるようになったEV路線バス。とはいっても、日本で走っているBEVバスのおよそ6割を占める中国BYD製BEVバスでも国内累計販売台数が約500台という状況。いまでは正真正銘の国産BEVバスもラインアップされているものの、興味のあるバス事業者がお試し程度で数台規模の導入に留まっていることも珍しくない。
BYDのEVバス画像はこちら
EVMJの問題の余波、そして日本と中国での政府間でのゴタゴタも合わせて中国系BEVバスの普及の勢いが減速しているとされている。しかし、それをフォローする存在の国産BEVバスは供給台数が絶対的に少ないなかオーダーが殺到し、納車まで時間がかかっているとも聞いている。
筆者の生活圏内で運行するある事業者の車庫でもBEV路線バスが数台導入された。導入直後は営業運行している姿を目にしたのだが、しばらくするとほとんど見かけることがなくなった。都内でも導入直後は見かけたが、そのうち見かけなくなったということがあった。何かメカニズムなどで問題が生じたのかと最初は考えた。
しかし、BYDなどは世界中に車両を輸出しているし、東南アジア某国で話を聞くと車両自体の不調はないとのことであった。ではなぜ日本だけ……と考えたとき事情通から興味深い話を聞いた。運転士が運転したがらないというのである。日本の路線バスの現状ではディーゼルエンジンを搭載したICEバスが一般路線車両だけではなく、貸切バスでも当たり前となっている。
EVバスの車内画像はこちら
日系バスメーカーは現状2社あるのだが、大手事業者などを中心に、保有車両を同じメーカーのみとするところも目立つ。ICEバスでも、パフォーマンスに差が出ることへの配慮もあるのかもしれない。このなか、ICEバスとは大きくパフォーマンスの異なるBEVバスが入ってくれば、興味を示して積極的にハンドルを握りたいと考える運転士もいれば、実際ハンドルを握ってみた結果もあるようだが、「ちょっとなあ」と抵抗を示す運転士が出てくるのは自然の流れ。バスやタクシーといった旅客運送事業者では組合の存在が大きいところもまだまだ多く、組合の総意としてBEVバス運転への慎重な姿勢を示され、運行自粛となることもあるようなのだ。
路線バスのイメージ画像はこちら
運転感覚の違いだけなら、プロドライバーなのだからすぐにモノにもできるだろうが、次に電力消費が気になるということで、運転への集中に不安を覚えるという声もあるようだ。これは実際BEVタクシーが結構普及しているタイの首都バンコクでたまたま最近、車両がBEVタクシーへ代わったというドライバーが遠距離の目的地を告げると充電量が心配と断られたことからも、BEV導入初期には世界共通であるある話なのかもしれない。
プロドライバーでもあるので、これから入る新車はすべてBEVバスとなれば腹もくくれるのだろうが、入ってくる新車はまだまだICEバスが多いなかでは覚悟が決まらないのも仕方ないことと考えている。
EVバスの充電イメージ画像はこちら
東南アジアでBEV路線バスの導入を進めるなかでは、その地域のバス事業の完全公営化や準公営化といった業界再編も行われるケースが目立つ。BEVバス導入に際して、車両導入のほか充電施設設置などの初期導入コストが賄えないとの判断があってのことのようだ。
日本でも民間事業者個々に積極的なBEV化を求めるのは、体力が弱まっている現状からも難しい。最近はオリンピックや万博のような国際的イベントのときにはバスについても、会場までの送迎などで使う車両はゼロエミッション車に限ると主催者側がいってくることが多い。現状を知らないなかの発言で事業者を翻弄させているようにも見える。
大阪万博の会場内を走るEVバス画像はこちら
世界的にはバスやタクシーの車両電動化が進んでいるのだが、日本としてもその流れに同調するのか、もしくはタクシーならハイブリッド仕様があり、バスなら世界的にも環境性能の高いディーゼルエンジンがあるのだから、そもそもBEV化を進める理由はどこにあるのか、そして必要の可否判断ができるように政府など公の機関がはっきりと道筋を示す必要があるだろう。
日本人お得意の体面を意識して現場に丸投げして、BEVバスだけを無闇に増やすだけで終わるような話でもないのではないかと考えている。