同じ性能なのになぜ違う? 直列やV型、3気筒に4気筒など「クルマのエンジン形式」が複数ある本当の理由

この記事をまとめると

■クルマを走らせるにはエンジンが欠かせない

■エンジンにはさまざまな形状と気筒数がある

■それぞれのエンジンには性能の限界があるほか搭載するクルマに合わせて選択される

エンジンの形や排気量が変わると何が変わる?

 エンジンに、気筒数などで違いがあるのはなぜか? 諸元性能ではほぼ同じであっても、気筒数が違ったり、直列かV型か水平対向かなど、形式の違いもあったりする。エンジン本体の話をまずすると、動力としての物理的な適正値や限界が存在する。排気量では、1気筒あたり500ccまでが適切とされている。

 それ以上でもエンジンを作ることはできるが、たとえば、往復運動するピストンが大きくなりすぎ、回転数を高めにくくなるという弊害が生じる。高回転・高出力という言葉があるように、エンジンは回転が高くなるほど馬力を上げられる。

 もうひとつ、ピストンが往復する速度の限界は、25m/sといわれている。1秒に25メートルという速さは、時速に直すと90km/hだ。ピストンは、上死点と下死点(最上端と最下端)で停止する(速度が0km/hになる)。そして再び25m/sの速度に達する。最高速度に達するのは、ピストンが往復する中間地点だ。ピストン速度の限界により、おのずとストローク(ピストンが往復する距離)に制約が生まれる。

 以上のような物理的条件のもとで、エンジンが設計される。

 たとえば、2000ccのエンジンで4気筒であると、1気筒500ccまでという要求に対する限界となる。5気筒や6気筒にすれば、1気筒あたりの排気量をより小さく抑えることができる。それは燃焼室を小さくしたり、よりピストンスピードを高めたり(より高回転に)することに通じる。

 世のなかのエンジンは、2000ccをひとつの境界とし、それ以下の排気量であれば、3気筒や4気筒と気筒数の少ないエンジンを設計でき、それを超えるような排気量のエンジンは、多気筒化されることになる。

 次に、ストローク(ピストンの往復距離)については、25m/sがピストン速度の限界とすれば、2輪のエンジンのように1万回転/分までまわそうとすると、約60mmが限界だ。それ以上長いストロークになると、ピストンの限界速度を超えてしまう。

 クルマは、そこまで高回転でまわさない乗用車が多いので、より長いストロークを使える。

 同じ排気量でも、ストロークを長くすると、トルク(回転力)を高めたり、燃費をよくしたりしやすくなる。理由は、ピストンが押されて、力をクランクシャフトに伝えるときのコンロッドを長くでき、回転力を増やすことにつながるからだ。これをモーメントという。モーメントとは、ピストンが生み出す力と、コンロッドの長さによって決まるクランクシャフトの回転半径を掛け算した値だ。

 そして燃焼室が小さくなれば、点火プラグで混合気に着火した炎が隅々まで行き渡り、燃料を燃やし切りやすくなる。燃焼効率がよいということは、燃費のよさにつながる。ストロークの長いエンジンが、排気量を問わず、発進での出足がよく、燃費に優れるのはこのためだ。

 一方、ストロークの短いエンジンは、高回転化させやすいが、燃焼室が大きくなるため燃費を悪化させる可能性がある。それでも、高回転でまわせば出力(馬力)を大きくできるので、スポーツカーやレーシングカーのエンジンはショートストロークの傾向にある。

 次に、直列かV型か水平対向かという形式については、気筒数が少なければ直列がよい。エンジン全体の寸法が小さくなり、車体への積載性に優れる。

 6気筒になると直列では全長が長くなるので、V型を選ぶ場合がある。多気筒エンジンを積みながら、車体が大きくなかったり、客室を広くしたりしたい車種は、V型が適している。あるいは、多気筒かつ、前輪駆動を両立させようとする場合も、V型とすることでエンジン全長を短く抑え、エンジンルームへ横置きに搭載できるようになる。水平対向は、エンジン高さを抑えたい車種で選ばれる。

 たとえばポルシェ911は、もし水平対向でなければ、車体後ろが高くなり、後方の見通しや空気力学的な処理が難しくなるだろう。

 まとめると、エンジンには物理的な限界がある。またエンジンを搭載するクルマの大きさや駆動方式などにより、直列かV型かといった形式が関係してくる。

 ほぼ同じ排気量であったり諸元性能であったりしても、エンジンの形態に違いが生じるのは、以上の理由による。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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