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ツルツルよりもザラザラボディのほうが空気抵抗が少ないってマジ!? 水泳界で使用禁止になった「サメ肌」技術がいまクルマの空力最前線だった (2/2ページ)

ツルツルよりもザラザラボディのほうが空気抵抗が少ないってマジ!? 水泳界で使用禁止になった「サメ肌」技術がいまクルマの空力最前線だった

空気抵抗は速度の2乗パワーを消失し燃費も悪化

 新車の解説やカタログでたびたび目にする”Cd値”。「空気抵抗係数」という言葉でも言い表される。聞いたことがないという人はまずいないだろう。クルマだけでなく、飛行機、電車、自転車……すべての物体が進もうとする方向に必ず生じる、目に見えない空気の壁=抵抗のことだ。

 この抵抗値が大きいほどエネルギーを多く消耗し、速度も鈍る傾向がある。現行型のプリウスが0.27というCd値を謳って話題になったのは記憶に新しい。一般的な乗用車が0.40前後、0.30を下まわれば「優秀」と言われるCd値がわずか0.27でしかないのだ。

 クルマが進む際の空気抵抗は速度が増すほど大きくなり、「速度の2乗に達する」と言われている。つまり、100km/h走行時の空気抵抗は50km/h走行時の倍ではなく2の2乗、つまり4倍だ。もっと具体的に言えば、仮に100km/hで走っているクルマが受ける抵抗が約110㎏だとして、倍の200km/hにスピードアップすれば約380kgという、とてつもなく大きな抵抗が加わることになる。

 100km/hでさえ出力の半分空気抵抗は速度の2乗パワーを消失、燃費も悪化以上を失うと言われていているのだから、速さを極めるスポーツカーは当然、燃費性能を追求するプリウスのようなエコカーにおいても、いかに空気抵抗の小さい車体にして燃料消費をセーブするかはきわめて重要な課題。自動車メーカーがCd値の低減に全力で取り組むのもうなずける。

本当の空気抵抗はCd値×前面投影面積

 空気抵抗を減らすためのアプローチとして、もっとも基本的なものといえばボディ形状の工夫だろう。それは、いわゆるスーパーカーを見れば明白だ。一様に空気の壁を鋭く切り裂く低く構えたウエッジ(楔・くさび)シェイプであり、あるいは、走行風をスムースに後方に受け流す、丸みを帯びたなめらかな形状になっていることが特徴。

 しかし、空気抵抗を語るうえで忘れてはいけないのが”前面投影面積”の存在だ。前面投影面積とは車体を正面から見た際のルーフからタイヤ接地面までの水平断面の面積のこと。流麗なウエッジシェイプであっても、この面積が大きければ空気抵抗の低減は叶わない。本来Cd値は単独ではなく、前面投影面積とともに語られるのが一般的なのだ。

 一方、空気抵抗の低減を目的としたボディ形状では看過できない問題もある。車体を浮き上がらせようとする揚力(Cl値)だ。

 たとえば流線型のボディを横から見た断面は飛行機の翼に近い。”ベルヌーイの定理”どおり車体には揚力が働き、速度を増すほどタイヤを路面に押しつける力も低下して走行安定性が著しく損なわれることに。

 そこで自動車メーカーでは空力部品などによってCl値を高めて安定性を確保しているのだが、Cd値とCl値は非常に強いトレードオフの関係にあり、空気抵抗は単純に小さくすればいいばいいというものではない難しさもある。

物体に加わる引き戻す力流体を進む際の”圧力抵抗”

 ここからが本題だ。では、ボディ(塗装)の表面がツルツルしているほうとザラザラしているほう、どっちの抵抗が小さい? と聞かれたら、ほとんどの人は「なめらかなほう」と答えるだろう。

 筆者もそうだ(った)。何十年も前の話だが、某カーワックスの宣伝文句に、「アメリカ空軍では空気抵抗低減を目的に戦闘機にも使用している」とあり、以来、愛用した記憶がある。

 ところが、「それは違います」と教えてくれたのが、今回の企画にご協力いただいた森健次郎さん。スポーツ用品総合メーカー、ミズノ株式会社の商品開発本部で3大会にわたって五輪競技ウエアの開発に従事。世界新記録の樹立に貢献した”サメ肌水着”の開発にも携わったキーマンのひとりだ。

「すべての物体には進む方向に抵抗が生じる」と前述した。これは”表面摩擦抵抗”と呼ばれ、水や空気中を進む際の表面的な抵抗であり、流体抵抗の内訳でいうと全体のわずか10〜20%でしかない。じつは、流体抵抗の残り8〜9割を占めているのが”圧力抵抗”と呼ばれるもの。

 そのメカニズムはイラストで示したとおり。流体内を動く物体の後方には乱流が生じて真空状態のエリアが発生する。いわば引き波のようなもので、進もうとする物体には引き戻そうとする巨大な力が加わるのだ。物体の表面を磨き上げたところで背後の巨大な乱流を抑制するには到底及ばない。全体の抵抗低減には限界がある。

 無論、競泳で水中を進む際にも選手の身体には大きな抵抗が生じてスピードを削ぐ原因に。そこで森さんをはじめとする開発チームが水着の素材として着目したのが、ザラザラしたサメの表皮だった。

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