
この記事をまとめると
■エンジンを切ってもまわりつづける現象をディーゼリングという
■過熱した燃焼室の煤が発火し点火なしでも燃焼が続いた
■燃料噴射や燃焼技術の進化で現在はほぼ見られない
いまは見られなくなった謎の現象
ディーゼリングとは、ガソリンエンジンでイグニッションを切っても停止せずまわりつづけることをいう。本来はランオフといい、あたかも点火プラグをもたないディーゼルエンジンのように電源を切ってもまわりつづけるため、こう呼ばれるようになった。
では、本来は点火プラグで意図的に着火しないと稼働しないはずのガソリンエンジンが、なぜイグニッションを切っても回転し続けるのか?
猛暑や高速での連続走行などによってエンジンが過熱気味になった際、シリンダー内に蓄積した煤などが発火してエンジンが回転し続けてしまう場合がある。なぜガソリンが燃え尽きず煤となってシリンダー内に付着してしまうのか。かつては燃料供給に気化器(キャブレター)が用いられ、キャブレターのスロットルで供給ガソリン量が調整されたが、その精度は燃料噴射装置を使う今日ほど厳密ではなかった。
また、排出ガス規制が厳しくなるまでは、出力を高めたり加速をよくしたりするうえでガソリンを余分に供給する状況にもあった。余分なガソリンは燃焼室で燃え切らず、シリンダー内や点火プラグ付近に煤として堆積しやすかった。イグニッションを切ったとき、エンジンがそれほど熱せられていなければ無事停止するが、ややオーバーヒート気味になるような状況では、その熱でなかの煤(つまりもとはガソリン)が燃え出し、エンジンが止まらなくなってしまうのだ。
燃料噴射の時代になっても、燃焼室に直接ガソリンを吹き込む筒内噴射(直噴)を採用した当初は、燃焼室形状が必ずしも適切でなく内側に煤が付着してしまう場合があった。そしてエンジンが過熱気味になるとランオフが生じる懸念が残った。
ガソリンが余分に供給されている時代は、場合によってはその蒸発によって熱が奪われること(気化潜熱)でかえって燃焼膣内が冷やされる効果が期待できたが、直噴の場合はそもそも燃費改善が目的であるため、少ないガソリンで燃焼を実現しようとすることから気化潜熱の効果を期待できず、燃焼室内の煤によりランオフが出る可能性があった。
現在は直噴を採用しはじめてから35年以上が経ち、直噴を使った燃焼技術が進歩して燃焼室内に煤が付着しにくくなっている。このため、ランオフあるいはディーゼリングという症状を経験することがなくなっているのではないだろうか。
