
この記事をまとめると
■マツダは世界で初めてロータリーエンジン搭載の市販車を販売した
■過去にさまざまなロータリーエンジン搭載車をリリースしたが現在は1車種しかない
■その構造から燃費があまりよくないので現代では発電用としてしか相性がよくない
ロータリーエンジンが現代においてあまり使われない理由
東洋工業(現在のマツダ)は、1967年(昭和42年)にロータリーエンジンを搭載したコスモ・スポーツを発売した。正式には、ヴァンケル(ドイツ人技術者フェリクス・ヴァンケルが発明)型ロータリーエンジンといい、そもそもドイツのNSUが最初に市販化した。しかし、ロータリーエンジンにまつわる課題がすべて解決されていたわけではなく、大量生産による継続的な市販では、コスモ・スポーツが世界初といえる。
これを起点として、マツダは、2年あとの69年に、小型乗用車ファミリアにロータリーエンジン搭載車を追加した。同じ年、上級車種のルーチェにも、ロータリーエンジンを搭載した2ドアクーペを車種追加している。エンジン型式は、コスモ・スポーツとファミリアロータリーが10A型という491ccの排気量だったのに対し、ルーチェは13A型の655ccへ排気量を拡大している。
さらに1年あとの70年、ファミリアの上位車種に位置づけられるカペラに、ロータリーエンジン車を設定した。このロータリーエンジンは12A型で、排気量は573ccであった。続く71年には、ロータリーエンジン専用車種となるサバンナ(RX-3)を発売した。当初は10A型エンジンだったが、翌年に12A型を搭載したGTを追加している。
いずれのロータリーエンジンも、ローターは2個組み合わされ、総排気量はそれぞれ2倍になる。
以上、コスモ・スポーツ誕生からわずか4年の間に、5車種ものロータリーエンジン車をマツダは発売した。ロータリーエンジンに社運を賭けたマツダの意気込みが伝わる。
しかし現在、ロータリーエンジンを採用するのは、MX-30のプラグインハイブリッド車(PHEV)のみとなっている。マツダがかつて、ロータリーエンジンに賭けた期待は何であったのか?
ロータリーエンジンは、外枠となる繭型をしたハウジングの内側で、三角形をしたローターが回転し、そこでつくられる空間を燃焼室とする機構だ。ローターが回転するにつれ、燃焼室の空間は小さくなっていき、そこで混合気に着火すると燃焼し、気体の膨張でローターが回転力を得る。
出力軸(エキセントリックシャフト)が1回転するのに合わせ、毎回燃焼が行われるので、レシプロエンジンの2ストロークのように小排気量で高出力を得られる。これに対しレシプロエンジンの4ストロークは、出力軸(クランクシャフト)2回転に1度しか燃焼しないので、ロータリーエンジンの優位性が際立つ。またピストンの上下運動がなく、回転運動だけなので、エンジン外観の寸法を小さく収められ、なおかつ振動が少ない。
一方、ハウジングの内側をローターが回転する機構であるため、燃焼室は長方形になる。円形のピストンの燃焼室と違い、点火プラグによる着火の火炎伝播が隅々まで届きにくく、完全燃焼しにくい。つまり、燃費が悪化しやすい。
またローターが回転することで燃焼室が移動していくので、その間に温度が下がりノッキング(異常燃焼)は起きにくいが、排出ガス浄化で炭化水素(HC)が増えやすくなる。それは、窒素酸化物(NOx)の排出が少なくなることも意味する。
ロータリーエンジン特有のこうした性質により、燃費向上や二酸化炭素(CO2)排出量を抑えるのに難しさがある。たとえばMX-30のPHEVも、より大柄で重い三菱アウトランダーPHEVより燃費が悪い。発電用エンジンとして、回転運動だけのロータリーエンジンの振動の少なさが活かされるPHEVのMX-30以外、現在のマツダでは活躍の場が限られている。
