
この記事をまとめると
■日本製のエンジンは海外のクルマにも搭載されている
■海外のメーカーで独自にチューニングされている例もある
■開発力がない新興メーカーを支えたケースもあった
名車を支えているのはじつは日本メーカー!
「輸入車のパワーユニット」と聞けば、多くの人はアウトバーンで鍛え上げられた重厚なるドイツ製エンジンや、官能的なエキゾーストノートを発するイタリア製エンジン、あるいはアメリカ車に搭載される大排気量V8の鼓動などを想起することだろう。
だが輸入車のなかには、ブランドとしての国籍は欧米でありながら、そのボンネット内に「メイド・イン・ジャパン」の心臓部を秘めていたモデルも少なからず存在する。
単なるコスト削減のためのOEM供給から、日本メーカーの高い精密工学に惚れ込んだ熱烈なラブコール、果ては規制クリアのための苦肉の策まで、その背景はさまざまだが、この記事では「その心臓部に大和魂(?)を宿した輸入車」たちを、背景ごとのグループにわけて紹介していこう。
まず紹介したいのは、欧州のバックヤードビルダーや超高級スポーツカーブランドが、日本の優れた軽自動車用エンジンあるいはコンパクトカー用エンジンに着目し、それを自社のモデルに搭載するケースだ。
●代表例1|ケータハム セブン170/160
パワーユニット:スズキ製660cc直3ターボ(K6A型/R06A型)
英国の伝統的ライトウェイトスポーツカー、ケータハム・セブン。この超スパルタンなオープンスポーツにおいて入門モデルとして2014年に登場したのが「160」で、2021年に登場した現行型が「170」である。
そしてそこに搭載されるパワーユニットは、日本のスズキ製660cc直3ターボ。かつてジムニーやカプチーノ、アルトワークスなどを支えた「K6A」、そして最新の「R06A」ユニットである。車重わずか440kg前後という極限まで削ぎ落とされたケータハムのシャシーに、自主規制枠を外して85馬力前後にまでファインチューンされた日本の軽ターボエンジンが組み合わされているのだ。
その走りはまさに痛快のひと言。インフレ状態にある世俗のパワー競争から完全に解脱し、「軽さこそ最大の武器」であることを証明するこのマシンは、日英の職人魂が見事に融合した奇跡の1台。なお日本国内においては「黄色ナンバー(軽自動車登録)」で維持できるというのも、なかなかシブいポイントである。
●代表例2|アストンマーティン シグネット
パワーユニット:トヨタ製1.3リッター直4(1NR-FE)
英国の名門アストンマーティンが2011年に突如発表し、世界中のエンスーの度肝を抜いたウルトラプレミアムコミューターが「シグネット」だ。
ベースとなったのはトヨタの超高効率パッケージングカー「iQ」。フロントマスクにはアストンマーティン伝統の「ヴェーングリル」が奢られ、インテリアには最高級レザーや職人によるハンドステッチがふんだんに施されていたが、ボンネットの下に収まるのはトヨタ製の1.3リッター直列4気筒「1NR-FE」エンジンそのものだった。
※画像はトヨタ IQのエンジン
当時のCAFE規制をクリアするために大排気量スポーツカーメーカーが生み出した窮余の策という側面もあったが、日常域での圧倒的な信頼性と壊れにくさを担保しつつ、アストンマーティンの優雅な世界観を街なかで味わえるという、きわめて異色なコレクターズアイテム(?)に仕上がっていたことは確かだ。
