
取材時点では準備中だったが現在は一般向けに公開中!
トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ(TGR-E)モータースポーツ博物館を訪れたのは2023年の8月で、当時は一般公開に向けての準備中だった。だから博物館の訪問取材というよりも、収蔵車両の保管庫探索的なノリでの取材だったように記憶している。
ところが先日、富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久第3戦の取材で、今回はドライバーとして顔を見せていたTGR-E副会長の中嶋一貴さんとお会いした際に、本来の取材とは別に世間話的なノリでこの博物館に話が及び、いまでは一般公開されているとうかがって慌てて紹介記事の原稿を書き進めることにした。
ちなみに、TGR-Eはトヨタ自動車の完全子会社でWECやF1、世界ラリー選手権(WRC)などのマシン開発の総本山であり、またモータースポーツ活動を行う実戦部隊でもある。その歴史は古く、1973年から始まったWRCにトヨタが参戦を始めたときに、ヨーロッパで活躍していたオベ・アンダーソンをサポートしたことが、その第一歩だった。
その後、彼のチームであるアンダーソン・モータースポーツをトヨタが買収してトヨタ・モータースポーツ有限会社(TMG)が誕生し、2020年に現在のTGR-Eへと社名変更している。
WRCやF1などでも活躍し、現在はトヨタのワークスとしてル・マン24時間を頂点とするWECの活動が主流となっているが、GRスープラGT4など市販モデルをベースにした競技車両の販売も行っている。
WRCからF1・WECまでトヨタの競技車両が勢揃い
こうしたTGR-Eの成り立ちから予想されるように、この博物館にはWRCからF1、そしてWECとトヨタの競技車両が勢揃い。
WRCの競技車両に関してはグループ4のTE27レビンやグループBのRA63セリカなど昔懐かしいクルマから、グループAの歴代セリカやカローラWRCまで、文字どおり古今の名車が顔を揃えている。
1984 Toyota Celica GT-TS TA64 Group B
トヨタが初めてサファリラリーに参戦した1984年にデビュー・ウィンを果たしたTA64セリカ。ツインカムターボがベースのグループB仕様。隣にはRA40系のセリカやTE27レビンなどのグループ4仕様のラリー車両が並ぶ。
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2015-16 Toyota Yaris XP130 WRC Engine Test-Car
トヨタが17年シーズンからのWRC復帰に向け1.6ℓ直4ターボのグローバル・レース・エンジン(GRE)開発用に、ヤリスをベースに仕立てたエンジン・テストカー。出自を聞くとヤリスも獰猛な獣に見えてくるから不思議だ。
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ただし、これらの多くは国内でも展示されたことがあるため既視感を覚えるが、これがF1カーとなると少し状況が変わってくる。
まずは2001年に発表されたテストカーのTF101から活動休止に伴って実戦参加がかなわなかった2010年用のTF110……と、国内ではあまり目にすることになかったものも含めて全モデルが勢揃いしている。
2001 Toyota TF101
トヨタ/TGR-EがF1GPに参戦したのは2002年からだが、当初は2001年から参戦の予定だった。初号機のTF101は2001年に完成し、テストカーとしてGPサーキットを実走。多くのデータ収集を行い翌年からの開発に大きく寄与した。
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2005 Toyota TF105
グスタフ・ブルナーが手がけた2005年用のF1マシンがTF105。空力をいっそう追求し、ラルフ・シューマッハとヤルノ・トゥルーリのコンビで参戦。2回のポールと1回のファステストラップ、そして5回の表彰台を確保している。
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2008 Toyota TF108
フロントウイングにノーズを跨ぐ1枚物のエレメントを追加して、空力のコンセプトを一新した2008年用のF1マシンがTF108。ホイールベースが延長された一方でサスペンションが改良され、テクニカルなコースを得意としていた。
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2009 Toyota TF109
空力関連のレギュレーション変更に則して、再び空力のコンセプトを一新した2009年用のF1マシンがTF109。ノーズ先端の高さが引き上げられてエレメントも増え、三次元曲面で大きく内側に湾曲したタイプの翼端板が採用されていた。
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2010 Toyota TF110 Prototype
トヨタ/TGR-Eが、2009年シーズンを限りにF1参戦を休止したことで、2010年シーズン用に開発されていたTF110は実戦参加の叶わない悲運のラストモデルに。フロントウイング自体はTF109と似たデザインだが、ノーズは薄く幅広になっている。
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一方WECの競技車両に関しても、TMGが初めて手がけたTS010の1993年モデルから今年のル・マンでも戦った最新モデル、GR010 HYBRIDの2023年仕様、そしてただ1台だけ製作されたTS020 “GT-One”のロードモデルも合わせて展示されている。
1993 Toyota TS010
ル・マン24時間をはじめとするスポーツカー世界選手権(SWC、現WEC)の新世代マシンは国内で設計開発が行われたTS010。トヨタ・チーム・トムスから参戦し、1993年のル・マン24時間ではトラブルに見舞われたが4位入賞を果たした。
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1998 Toyota TS020 “GT-One” Road Version
トヨタ/TGR-Eが1998年のル・マン24時間とWEC用に開発したマシンがTS020 “GT-One”。1998年はLMGT1、1999年はLMGTPとして開発されたため、1998年にはレギュレーション的に必要となるロードカーも1台だけ製作された。
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2014 Toyota TS040 Hybrid
パワーユニットにハイブリッドを使用したTS030 Hybridの後継モデルで、トヨタ/TGR-Eが2014年のル・マン24時間/WEC用に開発したマシンがTS040 Hybrid。ル・マン優勝は果たせなかったが、アウディ&ポルシェを破って王座に輝いた。
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2017 Toyota TS050 Hybrid
TS040 Hybridの後継として2016年に登場したTS050 Hybrid。エンジンを3.7リッターのV8から2.4リッターのV6直噴ツインターボにコンバート。2シーズン目となった2017年のル・マン24時間もトラブルで勝利を逃したが、ポールポジションを獲得している。
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2018 Toyota TS050 Hybrid
TS050 Hybridにとって参戦3シーズン目となった2018年は、ル・マン24時間を1-2フィニッシュで制覇。トヨタにとって30年来の悲願を達成することになった。こうして見比べると、同じTS050 Hybridでも年次仕様による違いは小さくない。
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2022 Toyota GR010 Hybrid
ル・マンを制覇したTS050 Hybridの後継は2021年に登場したGR010 Hybrid。LMP1からル・マン・ハイパーカーに規定が変わったことから、エンジンを2.4リッターのV6直噴ツインターボからNAの3.5リッターV6にコンバートしている。
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これらが一堂に会した様は、まさに壮観・圧巻で、トヨタ・ファンならずとも必見の価値アリだ。
トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ・モータースポーツ博物館
TOYOTA GAZOO Racing EUROPE Motorsport MuseumToyota-Allee 7,50858 Köln, Deutschland
毎月第1土曜日に開館(要予約のガイドツアーのみ)
入館料は30€(邦貨換算約5000円)
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TGR-Eモータースポーツ博物館のあるケルンは、日本国内から多くの直行便が飛んでいるフランクフルト空港から距離にして200kmあまり、クルマで2時間強の距離にある。早朝にフランクフルトに到着すれば、その日の午後には博物館を訪れることが可能だ。ケルンには当館以外にもクルマ関連の博物館も少なくない。トヨタ・コレクションも当館から徒歩圏内にあるから、フランクフルトに到着したら、まずは旅装を解いてホテルでリフレッシュ。翌日に1日でふたつの自動車博物館を歴訪することをお薦めする。
※本記事は雑誌「CARトップ2025年8月号」の記事を再構成して掲載しています
