
素晴らしい高剛性ボディと完成度の高いサスが高評価
アウディのミドルクラスモデルであるA5。パフォーマンスを向上させたスポーツモデルであるS5のワゴンボディ、S5アバントが今回の評価対象車だ。
ボクが待ち合わせ場所に到着した際、スタッフが車両の撮影をしていたのだが、リヤハッチやボンネットの開閉を眺めていると、日本メーカーの開発陣が「蓋もの」と呼ぶそれらの部分のキャッチ部やヒンジなどが、非常にシッカリと作られていることがわかる。
まずは極低速で、ワインディングへと向かう荒れた路面を走行。サスストロークは十分なのだろうがストローク感を感じさせず、それでいて路面からのエネルギーはシッカリと吸収し、じつに上質な乗り味を示す。これは相当に高いボディ剛性のなせる業だ。ボディ自体もさることながら、先ほど述べた、ドアなどの蓋ものを単なる蓋としてではなく、剛性パーツの一部として設計していることも影響している。結果、ダイナミクス性能を支えるに十分な剛性のさらに1段階上の水準を確保することで達成できる、ボクが振動剛性と呼ぶ領域に達していた。
ワインディング本線に入り、ペースを上げて走行する。V6ターボは、3リッターターボということから考えればおとなしめの、367馬力というスペック。実際驚くようなパフォーマンスが感じられるわけではないものの、回転振動や吹き上がりはじつにスムースで上質だ。どちらかというと、扱いやすさに振ったユニットと言える。
組み合わされるトランスミッションのSトロニックは、日本のタイトなワインディングではほぼ3速ホールド、たまに4速に入るような設定だ。これは各ギヤのレシオというよりもファイナルが高いためで、おそらく速度レンジの高い欧州の郊外路やニュルであればこれがマッチするだろう。
そして特筆すべき点は、フラットライドである。前後のサスペンションは、ロールをシッカリと抑えていることはもちろん、加減速に対して十分な反力が発生するようなレイアウトになっており、ノーズダイブやスクウォートがまったくといっていいほど感じられず、非常に安定した姿勢を見せる。サスの完成度は世界トップクラスと言っていいだろう。
ブレーキも踏力に対する減速度のリニアさ、タッチ、フィーリングなどすべてが高評価だ。さらに長いワインディングを走行しても熱による減速度の変化は感じられなかった。システム自体も素晴らしいのだが、先ほど述べたフラットライドも減速を助けている。極端な話、ブレーキング時にリヤが沈み込むような感覚で、4輪に荷重が乗った状態で減速するため、リヤのブレーキが十分に使えるのだ。
唯一と言っていいのだが、S5で気になる点は、車重が2tにも達するためコーナリングアプローチで慣性モーメントが大きくノーズの動きに軽快さがないことだ。世界トップクラスのボディ剛性、サイズの大きいV6ターボ、前後マルチリンクのサス、そしてクワトロと呼ばれるAWDなど、優れた走りを生み出すために必要な要素は、そのまま重くなる要因でもある。アジリティに関しては致し方ないところだろう。
久しぶりにアウディを試乗したが、これまでの荒々しいアウディの印象をいい意味で覆す素晴らしいクルマだった。またドイツ車が世界を突き放し始めた、そんなことを感じさせる走りと言える。
※本記事は雑誌「CARトップ2025年11月号」の記事を再構成して掲載しています
