
この記事をまとめると
■違反した際たとえ県境を越えても警察の追跡から逃げ切れるわけではない
■都道府県警察は必要に応じて管轄区域を越えて職権を行使する
■どうあがこうと逃走は無意味なので停車して警察の指示に従うべきだ
いまだ残る危険な都市伝説の真相
深夜の高速道路を快調にクルージング中、背後から突如として現れる赤色灯とサイレンの轟音。バックミラーに映るパトカーあるいは覆面パトカーの姿を認めた瞬間、大半のドライバーは背筋を凍らせ、おとなしく左ウインカーを出して路肩へとクルマを寄せるはずだ。それこそが法治国家に生きる善良な大人(違反している時点で善良か? という話はあるが……)の取るべき、唯一の行動である。
ところが世のなかには、妙な都市伝説を信じ込んでいる手合いが一定数存在する。
「高速道路でパトカーに追われたら、アクセル全開で隣の県まで逃げ込めば勝ち」
「警察は管轄外のエリアまでは追ってこない。県境を越えれば見逃してくれる」
昭和の劇画やアクション映画のカーチェイスシーンじゃあるまいし、令和のこの時代に、そんな都合のいい話があるわけがない、と一笑に付したいところだが、驚くべきことにネット上や旧車乗りの怪しい飲み会などでは、いまなおまことしやかに語り継がれているのだ。
結論から申し上げよう。「県境をまたげば捕まらない」などというのは100%大嘘、完全無欠のデマである。
まずは、この都市伝説の根底にある「日本の警察は都道府県ごとの組織だから、他県の領分には手を出せないはずだ」という思い込みを粉砕しておこう。
確かに、日本の警察組織は各都道府県の公安委員会および警察本部(警視庁、大阪府警、神奈川県警など)によって管轄がわかれている。しかし、日本の法律はそんな縦割り行政の隙を突いて逃げ得を許すほどマヌケには作られていない。
決定的な法的根拠となるのが「警察法第61条」だ。条文をそのまま引用しよう。
【警察法第61条(管轄区域外における職権)】
警察職員は、関係都道府県警察の管轄区域内における犯罪の鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕そのほか政令で定める事務を処理するため必要があると認めるときは、当該関係都道府県警察の管轄区域内においてその職権を行うことができる。
要するに、現認した犯罪の捜査や被疑者の追跡・逮捕において必要がある場合、警察官は自らの管轄区域を越えて他都道府県のエリア内でも堂々と警察官としての職権を行使できると、法律でハッキリ明記されているのだ。
さらにいえば、スピード違反や警察の停止命令を無視して逃走する行為は、道路交通法違反の現行犯である。ここで登場するのが「刑事訴訟法第213条」だ。
【刑事訴訟法第213条】
現行犯人は、何人でも、逮捕状がなくても、これを逮捕することができる。
現行犯逮捕には、そもそも場所や管轄の制約などいっさい存在しない。一般人ですら現行犯人を拘束できるのだから(※ただし私人逮捕を行うには、定められた条件を満たす必要があります)、追跡中の警察官が県境を越えた瞬間に「あ、ここからは隣県だから検挙できませんなぁ」などとなるわけがないのである。
「法律上は追跡できても、実際は手続きが面倒だから県境手前で追跡をあきらめるんじゃないの? 」などと、往生際の悪い妄想を抱く人もいるかもしれない。だが、その考えは甘い。
