隣の県まで逃げ切ればセーフ……は100%大嘘! 高速道路の速度違反追尾「警察の追跡ルール」の裏側 (2/2ページ)

一時的に振り切ったとしても最後には捕まる

 とくに高速道路を取り締まる「高速道路交通警察隊(高速隊)」においては、県境をまたいだ取り締まりや相互乗り入れは日常茶飯事として行われている。高速道路というインフラは、一般道のように県境の直前で都合よくUターンしたり、インターチェンジを降りたりできる構造にはなっていない。そのため隣接する各都道府県警察の間では、以前から「境界付近における取り締まりや事故処理に関する相互乗り入れ協定」が緊密に結ばれているのだ。

 たとえば静岡県警の高速隊パトカーが東名高速の上り線で違反車両を発見した場合、そのまま追跡を続けて神奈川県内に入ろうが、東京の用賀料金所まで行こうが、何の躊躇もなく追尾・検挙できる。

 さらに、逃走車両が速度を上げて振り切ろうとした場合は、追跡しているパトカーから警察無線を通じて即座に「広域緊急配備」が敷かれる。

 逃走方向の先にある隣接県の警察本部や高速隊、さらには一般道のパトカーにまで、車種・ナンバー・特徴・進行方向が瞬時に共有されるのだ。県境を越えて「ふう、逃げ切ったぜ」などとアクセルを緩めた瞬間、待ち構えていた隣県警のパトカー数台に前と後ろをガッチリ挟み撃ちにされることも、可能性としてはあるだろう。

 百歩譲って、鬼のような超絶ドラテクでもって追跡を振り切ったとしよう。だが、現代の日本において「逃げ切り勝ち」はあり得ない。

 高速道路や幹線道路の各所には、ご存じ「Nシステム」が張り巡らされており、サービスエリアや料金所の監視カメラ、さらにはパトカーに搭載された高性能ドライブレコーダーが、逃走車両のナンバープレートと運転者の顔を鮮明に記録している。現場で捕まらなくても、数日から数週間後、自宅のドアをノックされて「後日逮捕」されるだけだ。

 そして何より恐ろしいのは「逃げようとしたことによって、罪の重さが跳ね上がる」という現実である。

 本来であれば、制限速度オーバー等の軽微な交通違反は「交通反則通告制度(いわゆる青切符)」の対象であり、所定の反則金を期日までに納付すれば刑事罰は科されず、前科もつかない。

 だがパトカーの停止命令を無視して全開加速で逃走した場合、話は完全に別次元へとシフトする。「道路交通法違反(救護義務違反や大幅な速度超過、信号無視等の累積)」や「公務執行妨害罪(刑法第95条:3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金)」あるいは「危険運転致死傷罪(悪質な暴走による事故の場合)」などが適用され、「赤切符(刑事罰)」どころか、その場で手錠をかけられて現行犯逮捕され、立派な「前科」がつくことにもなるだろう。

 数万円の反則金と数点の違反点数で済んだはずのものが、一瞬の愚かな逃走劇によって、免許取消や巨額の罰金または懲役刑、そして社会的信用の完全失墜へと化けるのである。

「県境を越えれば捕まらない」という都市伝説は、かつての刑事ドラマの演出や、現場の警察官が二次事故(逃走車が一般人を巻き込む大事故を起こすなど)を避けるために、やむを得ず深追いを控えた個別ケースを、都合のいいように曲解した妄言に過ぎない。

 もし高速道路で背後に赤色灯を認め、サイレンを鳴らされたなら、余計な邪念は一切捨てて速やかに左ウインカーを出し、ハザードを焚いて安全な路肩に停車すること。それが唯一の正解であり、傷口を最小限に留める方法である。


この記事の画像ギャラリー

伊達軍曹 DATE GUNSO

自動車ライター

愛車
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
趣味
絵画制作
好きな有名人
町田 康

新着情報