
この記事をまとめると
■ホンダのタイプSはワインディングでの走りや日常の快適性を重視したグレード
■専用エンジンや足まわりなどを採用しスポーティな走りを追求したタイプSもあった
■高級セダンのインスパイアやセイバーにも展開された
タイプRとは性格を異にするスポーティグレード
1992年11月に初代「NSX」からその歴史が始まった、サーキットベストのホットバージョン「タイプR」に対し、1996年11月にデビューした5代目「プレリュード」に最上級グレードとして初めて設定された、ワインディングベストのスポーティグレード「タイプS」。
現在は2021年5月に追加された「TLXタイプS」を皮切りとして、北米の高級ブランド「アキュラ」で展開されているが、当記事ではそれよりも前に日本で展開された「タイプS」6車種を紹介したい。前編では、まず3車種を紹介する。
【5代目プレリュードタイプS(1996年11月)】
ホンダで初めて「タイプS」の名が冠されたのは、かつて「デートカー」として一世を風靡したスペシャルティクーペ「プレリュード」、その最上級グレードだった。
1996年11月に発売された5代目プレリュードは、その前身にあたる4代目プレリュードが曲面基調のスポーティなエクステリアと近未来的なインテリアを備えていたのに対し、初代から3代目までの直線的で落ち着いたデザインに先祖返り。
だが、4代目から踏襲されたH22A型2.2リッターDOHC VTECエンジンは、2番目に上位のグレード「SiR」が4代目の上級モデル「Si VTEC」と同じ200馬力/6800rpmと22.3kgm/5500rpmを発したのに対し、「タイプS」は20馬力も高い220馬力を7200rpm、最大トルクも0.2kgm高い22.5kgmを6500rpmで発生。
このためにピストン形状を変更し、圧縮比を「SiR」用の10.6から11.0まで高め、シリンダーヘッドの吸気ポートを手作業で研磨。スロットルボディやエキゾーストパイプの直径を拡大するなど、細部にわたり専用チューンが施されていた。
また、「SiR」用のH22Aが黒い結晶塗装のヘッドカバーを装着していたのに対し、「タイプS」用のそれは赤く、「タイプR」のそれを彷彿とさせるものになっていたのも、心憎い演出だった。
そして、3代目以降はプレリュードを象徴するメカニズムとなっていた4WS(四輪操舵システム)を「SiR」などには設定しつつ、「タイプS」には新開発の「ATTS」(アクティブ・トルク・トランスファーシステム)を標準装備。
前輪の左右駆動力配分を最大80:20の範囲で制御可能としたそのシステムは、のちに4代目レジェンドからホンダ各車に採用される「SH-AWD」、現在は大型セダンやSUVを中心に各社が用いているトルクベクタリング機構の先駆けといえるもので、「タイプS」のみならず5代目プレリュード全体を象徴する存在となった。
このように、大人しくなった内外装に相反する、4代目以上の先進性とスポーティな走りを備えていたが、この先祖返りしたデザインは当時のユーザーには新鮮さに乏しく映り、販売は低迷。2001年6月に販売を終了し、2025年9月に6代目がデビューするまで、24年もの空白期間を経たことは、多くの読者の記憶に新しいことだろう。
【初代NSXタイプS(1997年2月)】
ホンダ初のスーパースポーツカーとして1990年9月に国内デビューした初代NSX。1997年2月に実施された初のマイナーチェンジでは、MT車のエンジンが3.2リッターのC32B型になったほか、MTも5速から6速へ多段化。また全車でタイヤとブレーキのサイズが拡大される一方、外観の変化はフロントロアスカートの形状変更にHIDヘッドライトの設定、高熱線吸収UVカットガラスの全面採用に留まるという、走りの進化に特化した内容になっていた。
そのなかでもとくに目玉となったのが、新グレード「タイプS」の追加である。
「サーキットベスト」の「タイプR」に対し「ワインディングベスト」を標榜するこのモデルは、リヤのサスペンションが硬められ、相対的にフロントが柔らかくセッティングされることで、標準仕様のクーペよりもニュートラルなステア特性が与えられた。
さらに専用パーツとして、BBS製鍛造アルミホイール、MOMO製本革巻きステアリングホイール、チタン削り出しシフトノブ、レカロ製フルバケットシート、軽量リヤスポイラー、メッシュグリルのサイドインテーク及びメンテナンスリッドを装着。
さらにフォグランプを廃止し、クルーズコントロール、エアバッグ、トラクションコントロールをオプション設定。オートエアコンとHIDヘッドライトを標準装備しながら、標準仕様のクーペに対し約30kg軽い1320kgに減量している。
