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「泥詰まり」を勝手に防ぐ!? トラクターが履くV字タイヤに隠された凄すぎる“セルフクリーニング機能”とは

「泥詰まり」を勝手に防ぐ!? トラクターが履くV字タイヤに隠された凄すぎる“セルフクリーニング機能”とは

この記事をまとめると

■農業機械のタイヤはぬかるみで強い牽引力を発揮するV字形状が基本だ

■泥を外側へ押し出すセルフクリーニング作用でスリップを抑制

■湿田向けのハイラグや操舵性を重視した逆ハの字など多様な種類が存在する

トラクターのタイヤは奥が深い

 田畑を耕したり稲を刈り取ったりする、農業機械のコンバインやトラクター。その足もとを観察すると、乗用車ではまず見かけない独特なパターンが刻まれていることに気づく。通常、タイヤの溝は縦溝と横溝で構成されている。しかし、コンバインやトラクターのトレッドパターンは進行方向に向かって「ハの字(V字)」を描いているのだ。そこには、水田などといった過酷なぬかるみを走破するための、合理的なメカニズムが隠されているのである。

 コンバインは主に稲刈り作業に使われるので、そのフィールドは水が抜かれた水田である。とはいえ、長く水が張られていた場所なので地面は泥でぬかるんでいる。トラクターにしても、似たような環境だ。

 そんなところを数トンにも及ぶ車体を沈み込ませずに前進させるには、強大なグリップ力(牽引力)が必要になる。そこで、「ハの字」の頂点を進行方向に向けたトレッドパターンを採用し、接地した瞬間にラグが泥に刺さり込んで、強い掻き出し力を生み出せるようにしたのである。

 加えて重要なのが、「泥はき」の機能だ。もしラグが「八の字」ではなく直角な横溝(バドル形状)であれば、ラグとラグの間に泥が詰まって表面が平らになりスリップしてしまう。「ハの字」に傾斜がついていることで、遠心力と接地圧の変化によって泥が外側へと押し出されるのだ。

 これをタイヤ工学や農機業界では、「セルフクリーニング作用」と呼ぶ。また、ハの字はラグが斜めに配置されていることになるので、常にラグの一部が接地面と接触し続けることになる。そのため、滑らかな転がり(連続接地)が可能となり、走行中の不快な振動や機体への負荷を大幅に軽減できるのだ。

 このように、一般的なコンバインやトラクターのタイヤは「ハの字(V字形状)」が基本だが、すべてのメーカー・全車種がまったく同じ一種類のハの字というわけではなく、以下のようなバリエーションが存在する。

・ハイラグ(高ラグ)仕様
とくに湿田(泥が深い田んぼ)向けに、ラグを通常より高く設定したタイプ。「ハの字」の勾配や溝の深さが強化されており、さらに強力な排水・排泥性とトラクションを発揮。

・左右非対称・交互ラグ(Zパターンやストッガ配置)
直線的な「ハの字」だけでなく、中央で左右のラグを交差させたり中央部にセンターリブを1本とおしたりして、舗装路走行時の耐摩耗性と泥抜きのバランスを整えた形状。ただし、全体的な傾斜のベクトルとしては「ハの字(V字)」の概念を踏襲する。

・前後逆パターン(逆ハの字)のケース
トラクターの前輪では、駆動性能よりも前進時の操舵性や制動性能を重視して、あえて逆ハの字にタイヤを装着することがある。

 自動車のトレッドパターンが水膜を切り裂く「排水性」を追求して作られているのに対して、コンバインやトラクターの足もとは「いかに泥を詰まらせずに前へ進むか」という過酷な課題に対し、最適解として設計されている。次に田んぼの近くでこれらの農機を見かけた際は、ぜひその足もとにある「機能美に満ちたハの字」に注目してみてほしい。

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