
この記事をまとめると
■北海道に本州からクルマで行くにはフェリーしか選択肢がない
■クルマも走れる第2青函トンネルを作ろうという計画がもち上がっている
■北海道と本州を行き来する料金を抑えることで物流や地域の活性化が期待される
青函トンネルをクルマでも走れるようにする計画があった
クルマでの本州(青森県)と北海道の行き来は、青函連絡船(フェリーボート)を使う以外に選択肢はない。
一方、鉄道は、1988年に青函トンネルが開通し、津軽海峡(海)の下を通過している。当初から新幹線規格で設計され、2016年から北海道新幹線が利用している。ほかに、通信線や送電線が敷設されている。トンネルがあれば青函連絡船を使わずに済むため、新幹線も北海道に届き、利便性が大幅に改善されたと、傍目には見える。しかし、じつは在来の貨物列車と新幹線の共用であることから、速さが売りの新幹線の効率を、十分に発揮できずにいる。
そこで持ち上がったのが、第2青函トンネル構想だ。
2016年(平成28年)には、鉄道トンネルとしての構想がまとめられ、翌2017年(平成29年)に、列車専用トンネルに加え、無人の自動運転トラック用のトンネルを備えた、2本のトンネル構想が提言された。これらを踏まえ、有人の(人が運転する)クルマも含めた、多用途トンネルの可能性を探ることになった。クルマが走るトンネルのイメージ図があり、それは、たとえば東京湾アクアラインのような様子といえる。構造図を見ると、通常、クルマが走行する片側2車線道路の下に、緊急車両用の道路も設定されている。
既存の鉄道用青函トンネルの全長は、54kmほどあり、これとほぼ同等のトンネル長さになると仮定すれば、途中にパーキングエリア(PA)を設置する検討も必要になる。NEXCOの規定では、最大で25kmごと、高規格幹線道路としては35kmごとに、休憩場所を設けるようになっている。これを参考にすると、トンネルの途中に1カ所は休憩所を設ける可能性がある。ただし、アクアラインの海ほたるのようなPAを設けられるのかどうか。もし不都合であれば、トンネルへの誘導部分となる陸上に、何らかの休憩施設を設定することも検討されているようだ。
トンネル実現には、開通したあとの通行料金が、利用者にとって重要な点となる。アクアラインも、当初の料金設定では通行する台数が少なく、割引されて利用が増えた経緯がある。
ひとつの基準となるのは、今の青函連絡船のフェリー料金との比較ではないか。乗用車のフェリー料金は、車体全長によって1万7200〜2万700円の幅があり、6〜9月の繁忙期は2割以上の追加金額になる。これに対し、第2青函トンネルの構想では、通行料金が5250円と考えられているようだ。
フェリーの利用に比べて安い上、青函連絡船の2時間半ほどの出航時刻の間隔を思えば、いつでも通過できる利便性があり、価値ある通行料金といえそうだ。さらに乗用車では、電気自動車(EV)の普及を視野に設備費を考えると、排気を外へ出す換気を簡略化でき、建設原価削減の可能性が出る。
また、自動運転が普及すれば、事故対応の設備も簡略化できるかもしれない。乗用車はもとより、トラック/バスも安全性が高まれば、資材費用高騰の折、建設費を抑える一助になりそうだ。つまり、EV+自動運転への期待は、環境適合性や安全性の向上にとどまらず、新たな海底トンネル建設によって、本州と北海道を結ぶ利便性を促す背景にもなってくる。
そして観光誘致や物流の効率化は、地元経済はもちろん、全国の消費者にとっても、商品の適正価格の促進につながる可能性が見えてくる。もちろん、新幹線と在来貨物列車を分離できれば、新幹線本来の速さで北海道を訪れることができ、航空機利用との競争が激化する可能性もあるだろう。
とはいえ、まだ第2青函トンネルの建設は確定しておらず、さまざまに検討されている段階で、今、工事を始めたとしても、完成は10年後だと想定されている。10年経ったあとのクルマ社会はどうなっているのか。物流はどう変化するのか。そして、単に北海道や青森県という当事者だけでなく、広く消費者の物価などにも、効果が表れるかもしれない構想である。
