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「原油よりヤバいかも……」ホルムズ海峡の混乱が日本のディーゼル車を直撃する知られざる理由

「原油よりヤバいかも……」ホルムズ海峡の混乱が日本のディーゼル車を直撃する知られざる理由

この記事をまとめると

■ホルムズ海峡では原油だけでなく尿素も大量に輸送されている

■尿素の物流が滞ればアドブルーの供給にも影響する可能性がある

■現時点では全国的な不足ではないが供給網の動向に注意が必要だ

中東情勢が物流業界をも左右する

 ホルムズ海峡の混乱というと、まず原油の輸送への影響が注目される。しかし、ホルムズ海峡を通って運ばれているのは原油だけではない。肥料などに使われる尿素も、この海域を通じて大量に輸送されている。この尿素は、トラックで使われるアドブルーの原料でもある。

 アドブルーとは、尿素を純水に溶かして一定の品質に調整した高品位尿素水のことだ。ディーゼルトラックに尿素そのものを入れるわけではなく、尿素から作られたアドブルーを専用タンクに補給して使用する。つまり、ホルムズ海峡で尿素の輸送が滞ると、その尿素を原料に作られるアドブルーの供給にも影響が及ぶ可能性がある。原油とアドブルーに直接の関係があるわけではなく、ホルムズ海峡という同じ輸送ルートを、原油だけでなくアドブルーの原料となる尿素も通っていることがポイントだ。

 ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ世界有数の海上交通の要である。原油やLNGの輸送ルートとして知られているが、2024年にペルシャ湾地域から海上輸送された肥料約1600万トンのうち、67%を尿素が占めていた。2026年に入ってからは中東情勢の悪化によって船舶の通航量が大幅に減少し、肥料輸送も不安定な状況が続いている。尿素の国際物流が滞れば、その尿素を原料として作られるアドブルーにも影響が及ぶ可能性があるということだ。

 ただし、ホルムズ海峡で尿素輸送が不安定になったからといって、すぐに日本でアドブルーがなくなるわけではない。日本は尿素を複数の国から輸入しており、マレーシアをはじめ、中国、サウジアラビア、ベトナムなどから調達している上に、国土交通省も2026年5月、高品位尿素水などの安定供給に向けて関係業界に協力を要請している。この時点では高品位尿素水そのものは平時と同水準で供給されていたが、一部ではBIBと呼ばれる箱型容器の流通に目詰まりも発生していた。現在注意すべきなのは全国的なアドブルー不足ではなく、原料となる尿素の国際物流や、容器、配送を含めた供給網が不安定になる可能性だ。

 では、なぜアドブルーがトラックに必要なのか。現在の多くのディーゼルトラックには、排出ガス中のNOx(窒素酸化物)を減らす尿素SCRシステムが搭載されている。このシステムで使用するのがアドブルーだ。排気ガスにアドブルーを噴射すると、尿素から生成されたアンモニアがSCR触媒内でNOxと反応し、窒素と水へ変える。アドブルーは燃料ではないが、排出ガスを浄化するために欠かせない存在なのである。

 しかも、アドブルーは単なる補助液ではない。車種や制御方式によっては残量が少なくなると警告が表示され、さらに減ると出力制限が行われる。空になった状態でエンジンを停止すると、アドブルーを補給するまで再始動できない車両もある。軽油が十分に残っていても、アドブルーがなければ正常に運行できなくなる可能性があるわけだ。ホルムズ海峡を通る尿素と、日本のトラックが使うアドブルーは、原料と製品という関係でつながっているのである。

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