
この記事をまとめると
■エンジンブレーキと排気ブレーキとリターダは仕組みも減速力の生み出し方も異なる
■大型トラックは複数の補助ブレーキを使いわけて安定した速度管理を行う
■エアブレーキはバタ踏みによる空気圧低下に注意し適切な操作が求められる
エンジンブレーキだけでは不十分?
大型トラックの運転席まわりの話では、「エンジンブレーキ」「排気ブレーキ」「リターダ」といった言葉がよく出てくる。どれも車速を落とす役割をもつが、じつは減速の仕組みも働く場所もまったく違う。まずは結論から。この3つをひとことで表すと、エンジンブレーキはエンジン自体の抵抗を使うもの、排気ブレーキは排気の流れへの抵抗を使うもの、リターダは駆動系の回転に抵抗をかけるもの、ということになる。
エンジンブレーキは、専用の装置があるわけではない。走行中にアクセルペダルを戻すと、エンジン内部で抵抗が生まれ、それが車速を抑える力になる。これを指して「エンジンブレーキ」と呼んでいる。低いギヤを選ぶほどエンジン回転数が上がり、利きも強くなるのが一般的だ。そのため、下り坂では、坂に入る前に適切なギヤへ入れておき、車速が上がりすぎないよう調整しながら走る。
ただ、大型トラックに多いディーゼルエンジンは、通常のエンジンブレーキだけでは減速力が足りない場面がある。そこで活躍するのが排気ブレーキだ。排気ガスの流れを利用した補助ブレーキで、排気通路をバルブなどで絞ってガスを出にくくし、その抵抗でエンジンの回転を抑える。エンジンの回転が抑えられると、駆動系を通じて車速も下がる。多くの大型トラックでは、運転席のスイッチやレバーで作動させる。作動中にアクセルを戻せば、通常のエンジンブレーキより強い減速力が得られる。
両者の違いを整理するとこうなる。エンジンブレーキはアクセルを戻せば自然に発生する抵抗、排気ブレーキは排気を意図的に絞って、さらに大きな抵抗を作り出す仕組みだ。似ているようで、別物といえる。
一方、リターダはエンジンの抵抗や排気ガスを使わない。トランスミッションやプロペラシャフトなど、駆動系の回転部分に直接抵抗を与えて減速する補助ブレーキだ。代表的な方式は電磁式と流体式の2種類あり、電磁式は電磁力を使って回転部分に抵抗を発生させる。流体式は内部のオイルなどの抵抗を利用し、回転エネルギーを熱に変えて減速する。
もうひとつ忘れてはいけないのが、エアブレーキだ。大型トラックでは、圧縮空気の力で作動するこのブレーキが広く使われている。車両に備えたエアタンクにため込んだ空気の圧力で、ブレーキを利かせる仕組みである。
ここで気をつけたいのが、ドライバーの間で「バタ踏み」と呼ばれる操作だ。ブレーキペダルを短時間に何度も踏んだり戻したりする操作のことで、エアブレーキはペダルを踏むたびにタンク内の圧縮空気を消費するため、繰り返すと空気圧が下がってしまうおそれがある。だからこそ、ペダルだけに頼らず、エンジンブレーキ・排気ブレーキ・リターダの特性を理解したうえで、上手に使いわけて速度をコントロールすることが大切になる。
エンジンブレーキ、排気ブレーキ、リターダは、どれも「減速のための装置」に見えるが、働く場所も仕組みも異なる。加えて、大型トラック特有のエアブレーキでは、バタ踏みによる空気圧の低下にも注意が必要だ。それぞれの仕組みを知っておくと、トラックのブレーキがどう使いわけられているのかが、ぐっと理解しやすくなる。
