誰もが聞いたことのあるトラックの「プシュッ」! 乗用車にはない「排気ブレーキ」って何?

エンジンブレーキの強化版として大型車に備わっている

 乗用車のブレーキは、フットブレーキとパーキングブレーキに大別できるが、トラックなどの大型車にはもうひとつ、排気ブレーキ(エキゾーストブレーキ)という仕組みがある。

 排気ブレーキとは、簡単にいうと走行中、アクセルをオフにしたときに、排気管内のバルブが閉じて、排気ガスの流れを悪くするシステム(完全に塞ぐわけではない)。排気ガスの流れが悪くなると、出口が詰まって、ピストンも上昇しづらくなり、その抵抗が補助ブレーキとなって減速装置のひとつとなる。つまりエンジンブレーキの強化版だと思えばいい。

 ただし保安基準上でも「減速装置」と定義され、主に車両総重量3.5トン以上のトラックやバスに装備される補助ブレーキとなっている。

 ではなぜ、大型車にだけ排気ブレーキがついているのか?

 大型車は車体が大きく、荷物を積むと大変な重さになるので、フットブレーキの負担が大きく、ブレーキパッド(シュー)の摩耗が早くなるから、という理由もあるが、もうひとつ、ディーゼルエンジンのエンジンブレーキが弱いという事情も大きく影響している。

 ガソリンエンジンでアクセルをオフにすると、スロットルが閉じて、吸入空気量が絞られるが、ディーゼルエンジンの出力は、吸入空気量ではなく、噴射する燃料の量で調整されるので基本的にスロットルチャンバーが不要。スロットルバルブがついていてもそれはフェールセーフのひとつで、通常はつねに全開状態。吸入される空気の量はアクセル開度では変わらないので、いわゆるポンピングロスがなく、ポンピングロスがないのでエンジンブレーキの利きが弱い。だからこそ、排気ブレーキが必要になる。

 排気ブレーキは、ステアリングコラムの横のレバーを動かすとオンになり、アクセルかクラッチを踏むとキャンセルされる。

 補助ブレーキといいつつ、排気ブレーキが働くと、通常のエンジンブレーキの1.8倍ほどの制動力が生じるのでけっこう強力。

 フットブレーキと上手く組み合わせて使うことで、トラックの荷物の満載時や長い下り坂でも安心して走ることができるというわけだ。

 ちなみに、スポーツカーの音量の大きいマフラーに組み合わせる後付けの消音装置、ECV(エキゾーストコントロールバルブ)も、エキゾーストパイプ内のバルブを閉じて消音させる製品だが、これもバルブが閉じているときは排気ブレーキと同じような働きをすることになる。ただしECVはアクセルと連動しておらず、3000回転以上でECVを閉じると排圧が高くなりすぎて、ガスケットなどが抜ける可能性もある。補助ブレーキとして使うのは当然目的外になるので要注意。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

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