
この記事をまとめると
■丸太を運んでいるトラックは「原木車」などと呼ばれる
■積むときは木の重さや長さなどを気にしつつ荷崩れに気を配る必要がある
■森林に行くことが多いので車両自体も走破性の高さが求められる
ただ木を運んでいるだけじゃなかった!
山間部の道路を走っていると、荷台いっぱいに丸太を積み上げた大型トラックを見かけることがある。製材された角材ではなく、伐採した木を一定の長さに切った「原木」をそのまま運んでいる車両だ。これらは一般に原木車や木材運搬車などと呼ばれ、伐採現場近くの土場から、製材工場、木材市場、バイオマス発電施設などへ大量の木材を運ぶ役割を担っている。見た目だけなら、平らな荷台に丸太を積んだだけにも見えるが、転がりやすく、形も太さもそろっていない原木を安全に運ぶため、通常の荷物とは異なる積載方法と車体構造が使われている。
原木輸送で特徴的なのが、荷台の左右に立っている太い柱のような部品だ。「スタンション」と呼ばれるもので、積み上げた丸太が左右へ転がり落ちるのを防ぐ支柱として働く。通常の平ボディートラックなら、荷台の周囲にあおりがあるが、長く重い丸太を積む車両では、強度の高いスタンションで原木を左右から受け止める構造が使われる。
原木は、段ボール箱やパレットのように形が一定ではない。1本ごとに太さや曲がり方が異なり、丸い形をしているため、そのまま積めば当然転がろうとする。このため積み込みでは、原木の長さや太さを見ながら、荷台上にできるだけ安定するよう配置し、スタンションの内側へ収めていく。林業の現場では、伐採した木材を一定の長さに切る「玉切り」をおこない、樹種や長さなどごとに仕分けして集積する作業も行われる。
積み込みには、グラップルと呼ばれる、巨大な爪で丸太をつかむ機械が使われることが多い。土場に設置された重機で積む場合もあれば、クレーンやグラップルを装備した車両が、自ら積み込む場合もある。人力では到底扱えない重量の丸太を何本もつかみ、荷台の上へ並べていくことで、短時間のうちに積載できる。荷降ろしも同様で、製材工場などではグラップルやフォークリフトなどを使って原木を降ろすため、一般貨物のように人が荷台へ入り、ひとつずつ手で扱う輸送とは大きく異なる。
しかし、スタンションの間にきれいに原木を積んだからといって、それだけで走行できるわけではない。積載したあとには、ワイヤーロープやチェーンなどの固縛具を原木の上から掛け、荷物全体を荷台へ締め付ける必要がある。スタンションは主に左右への落下を防ぐが、トラックには発進、減速、急ブレーキ、カーブ、道路の段差などによって、前後左右に大きな力が加わる。重量のある原木が一度動き始めれば、その力は非常に大きくなる。原木同士がなじんで積み荷が沈んだり、振動によって固縛状態が変化したりする可能性もあるため、出発のときだけでなく、途中で状態を確認することも重要となる。
さらに原木輸送では、重量管理も難しい。丸太は外見だけでは正確な重量を判断しにくく、同じ大きさでも、樹種や含まれる水分量によって重さが変わる。伐採直後の生木は大量の水分を含むため、見た目以上に重いこともある。荷台にはまだ積めそうに見えても、車両総重量や軸重の上限へ先に達する可能性があるため、「荷台の高さまで積めるだけ積む」というわけにはいかない。道路を走る車両には総重量や軸重などの制限があり、一般的制限値では軸重10トンなどが定められている。
原木車には、山間部を走ることならではの事情もある。木材を積み込む土場は、舗装された物流センターとは違い、林道や未舗装路の先に設けられていることも少なくない。狭い道路や急勾配を通りながら木材を積み、一般道へ出て長距離を走る場合もある。そのため車両には、積載能力だけでなく、悪路での走行性や取り回しも求められる。一方、大量輸送が必要な地域や、長い原木を運ぶ場合には、トレーラーを利用するケースもある。運ぶ木材の長さ、重量、道路条件などによって、車両の形態が使いわけられているのだ。
山で伐採された木が住宅の柱や家具、紙、燃料などへ姿を変えるまでには、まず大量の原木を山から運び出さなければならない。荷台いっぱいの丸太を積んで走る原木車は、その最初の物流を支える、林業ならではのトラックなのである。
