
この記事をまとめると
■同じ読み方の「旧車会」と「旧車會」は成り立ちも楽しみ方も大きく異なる
■暴走族文化を様式として受け継ぐ旧車會は海外からも独自のカスタム文化として注目される
■両者とも愛好家の高齢化や旧車価格の高騰など時代の変化に直面している
同じ読み方でもまったく別物
PCやスマホで「きゅうしゃかい」と入力して変換キーを押すと、たいていは「旧車会」「旧車會」というふたつの候補が並ぶ。どちらも発音はまったく同じで、使われている漢字も、要するに新字体か旧字体かの違いでしかない。
だがこの2文字が指し示すカルチャーと、そこに集う人々の生態は、天と地ほどに異なる。
もしもあなたが「きゅうしゃかい」と聞いて、週末のパーキングエリアで、上品そうな紳士たちがMGや初代フェアレディあたりを囲んで穏やかに談笑している光景を想像しているなら、それは前者の「旧車会」だ。
一方、耳をつんざく爆音とともに、天高くそびえ立つ三段シートやロケットカウルを装着したホンダ CBX400Fなどの集団が隊列を組んでいる姿をイメージしたならば、それは間違いなく後者の「旧車會」である。
この記事では、一般層には混同されがちなふたつの世界について、少しだけ踏み込んで考えてみたい。
まずは旧字体を使う「旧車會」の成り立ちから振り返ろう。
その源流が、昭和から平成初期にかけて夜の街道を席巻した「暴走族」にあることはいわずもがなだ。かつての暴走族は集団走行による威嚇や暴力、対立グループとの抗争を伴う明確な反社会的集団だった。
だが2004年の道路交通法改正による「共同危険行為」の厳罰化や、警察による徹底的な取り締まり、そして社会全体のコンプライアンス意識の高まりによって、旧来の暴走族は壊滅的な打撃を受けた。暴力と違法行為を看板に掲げたままでは、もはや公道に居場所は残されていなかったのだ。
そこで生まれたのが「旧車會」という新たな形態である。
走る時間帯は夜から昼へ。信号は守り、有料道路の料金所ではきっちりETCカードを使うか、一時停止して支払う。かつて不良と呼ばれていた少年たちが大人になり、家庭や定職をもつなかで、「社会のルールはいちおう守りつつ、あのころに愛したマシンとスタイルだけを趣味として楽しもう」と舵を切ったわけだ。
彼らのマシンメイク、いわゆる暴走族スタイルは、こうして暴力性から切り離され、純粋な「様式」として保存されることになった。
その最たる例が、リズミカルにスロットルを開閉して排気音を奏でる「コール」だろう。もはやあれは威嚇という枠を超え、一種の民俗芸能あるいは打楽器の演奏に近い職人技として磨き上げられている。旧車會のイベントではコール技術を競い合う大会すら開催されており、カルチャーとしては完全に様式美の域に達しているのだ。
