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【試乗】乗れば乗るほど馴染む不思議な感覚! DS3は乗らなきゃ損な隠れた名車

【試乗】乗れば乗るほど馴染む不思議な感覚! DS3は乗らなきゃ損な隠れた名車

価格もお手頃で「楽しいクルマ好き」必見のデキ

試乗車:DS3スポーツシック(299万円)

 DSというブランドは、かつてミシュランタイヤの系列企業だった時期もあり、あまりに独創的というかアバンギャルドなクルマばかりを作り過ぎてしまったせいもあり(それが良さ、個性であったのだが)、経営危機に陥った。その後1970年代に同じフランスのプジョーに吸収され、現在はPSAグループの一員となっているシトロエンの高級ブランドである。

 DSのクルマ作りはそもそも基本的な部分をプジョーと共通するシトロエンの各車を、内外装を中心に細かな部分まで仕立て直すというもので、たとえるなら「トヨタに対するレクサスよりも、価格も含めいい意味でライトな高級ブランド」といったところだろうか。

 ちなみにDSブランドのDSの意味は諸説あるが、1つはシトロエンが1954年から1976年まで生産していた、窒素ガスとオイルを使ったハイドロニューマチックサスペンションやUFOのようなスタイルを持つなど、いかにもシトロエンらしい個性やアヴァンギャルドさを持ち、大統領用車として採用された大型セダン、DSに由来すると言われている。

 DSブランドは2009年に発足し、その第一弾となったのが今回試乗したDS3である。DS3はシトロエンC3の先代モデルをベースにした(その元はプジョー207だ)、3ドアハッチバックと3ドアハッチバックでキャンバストップとなるカブリオを持つコンパクトカーとなる。

 DS3はDSブランドらしく、もともと個性的なシトロエン以上にアバンギャルドなスタイル(明るいボディカラーが揃う上に、ルーフを塗り分けたツートンカラーが豊富でオシャレなの点も大きな魅力だ)で、インテリアも高級感あるものとなっており、日本における輸入車らしさを強く備える。

 エンジン、トランスミッションといったパワートレインは、以前は2ペダル車がフランス製の4速ATやMTを自動化したAMTを使っていたため、悪い意味でのクセがあったが、現在はシックというグレード名の2ペダルが1.2リッター3気筒ターボ(最高出力110馬力&最大トルク20.9kg-m)+日本のアイシン製の6速ATに変更され、いい意味で無難なものになった。3ペダルのスポーツモデルはスポーツシックと呼ばれ1.6リッター直4ターボ(最高出力165馬力&最大トルク24.5kg-m)に6速MTを組み合わせる。

 なお日本でDSブランドは、DS3に加えDS4、DS5、DS7クロスバックも販売されている。

 じつは今年のJAIA試乗会での筆者にとっての掘り出し物はこのDS3であった。というのも試乗会の合間にVWゴルフ5 GTIの希少なMTという通なクルマに乗る友人とLINEをしていたところ、どういう訳か友人から「次のクルマはDS3でもいいかと思う」という返答があった。幸いDS3は試乗会当日でも空きがあったため「じゃあ話のネタにでもなれば」という非常に軽い気持ちで試乗したところ、ツボにハマってしまった。

 筆者は恥ずかしながらDS3に今年のJAIA試乗会で生まれてはじめて乗ったのだが、第一印象はあまり良くなかった。筆者のボスである自動車評論家の国沢光宏さんに「フランス車ってのは、MTだととくにそういうことがほとんどだ」とよく教えられたとおりで、具体的にはクラッチの繋がりにクセがある、シフトフィールも今ひとつ、ブレーキの踏み心地に剛性感がない、クルマが小さい、ホイールベースが短いせいなのかリヤの硬さを感じるといった具合であった。

 しかし5kmも走るとクラッチとシフトフィールにも慣れ、その頃には第一印象とは正反対に硬さどころかサスペンションが「よく動いている」と思うようになり、適度にシャープなハンドリングにも好感を持つようになった。

 エンジンも2000回転あたりからターボエンジンらしいパンチを感じ、レッドゾーンまで綺麗に回り、絶対的な速さも想像以上と、乗っていてすべてが絶妙にバランスされている。DS3が体に馴染んだあとは妙に気分が高揚し、「こんな楽しいクルマ、乗らなきゃ損だ!」とばかりに常識的なペースで走りまくってしまった。

 また高速道路を使って長距離を走った際の印象を想像しても、今どき大した装備ではないが、一定速走行型の通常のクルーズコントロールが着き(筆者はマイカーのトヨタ86に後付けしてまでクルーズコントロールを装備するほどのクルーズコントロール好きだ)、フランス車らしいフンワリとしたシートにインテリアの雰囲気、トップギヤでの巡航中のエンジン回転数も低く、静粛性もまずまずで、燃費も悪くなさそうと、快適性に代表されるロングツアラーとしての資質を感じた。

 さらに3ドアハッチバックということさえ許容できれば、リヤシートは大人2人に問題ない空間が確保され、ラゲッジスペースも4人分の荷物が載りそうなくらい広く、実用性も申し分ない。

 つまり私事であるが、スポーティなクルマが好きであまり大きなクルマをマイカーにしたくない独身者の筆者にとって、DS3は突然現れた理想的なクルマの1台だったのだ!

 それはともかくとして、DS3は登場からかなりの時間が経っていることもあり、存在自体を知らなかったり、忘れている人も多いと思うが(筆者も否定しきれない)、「300万円くらいでスポーティなクルマが欲しい」という人にはMTのスポーツシックを、「オシャレなクルマが欲しい」という人にもATのシックは大いに勧められるクルマなので、ぜひ一見だけはして欲しい。

 なおDS3がお気に入りになってしまった筆者は、今乗っているMTのトヨタ86にも十分満足しているものの、先立つものはさておきとしてお買い得感ある次のクルマを主に中古車サイトで探すのが日課だ。

 DS3は当然そのリストのトップに入り、試乗したMTのスポーツシックはもちろん、最近40歳が近くなってきたせいもあるのか、MT好きながら「そろそろATでもいいか」と思うことがよくあることもあり、ATのシックも含めてDS3が頭から離れない毎日を送っている。

 そしてJAIA試乗会のあと、個人的に同じDS3を借用し、数日間日常的に使ってみた。日常的に使ってみると輸入車ということもあり各部の操作にやや慣れが要るが、高速道路を中心に走ると燃費はリッター15km程度と良好といった発見があった。日常的に使った印象を含め、DS3が筆者の欲しいクルマリストの上位にあるのは今も変わらないままだ。

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